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森林動物が減少することでSDGsの達成を阻害することについて [原著]

Krause & Tilker (2021) How the loss of forest fauna undermines the achievement of the SDGs. Ambio (2021).
https://doi.org/10.1007/s13280-021-01547-5

熱帯地域における大型動物の減少が4つのSDGs:飢餓ゼロ(2)、健康と福祉(3)、気候変動対策(13)、陸の豊かさ保全(15)とどのように関係しているのか、現状を整理し、さらに熱帯地域における大型動物の減少にともなう危機にどのように対応していくのかを提言した研究。確かに森林破壊(deforestation)や森林劣化(forest degradation)は政治的にも注目されてきたけど、3つ目の「de」のdefaunationは無視されてきた(この言い方は面白い)。

飢餓ゼロ(2)の視点からは、野生動物に生活を依存する地域住民の資源基盤を不安定化することが示されている。ただ、野生動物の肉から得ている栄養を代替できないとdefaunationを進行させることにもつながる。健康と福祉(3)の視点からは、野生動物は人獣共通感染症の宿主であり、近年の大規模な感染症の大部分は熱帯地域の野生動物やその消費行動と関連している。ケニアではdefaunationによる栄養カスケード効果でネズミの密度が高まった結果、ダニ媒介性病原体の拡散や流行に影響を与えた場合もある。気候変動対策(13)の視点からは、大型動物に種子散布を依存することが多い大型種子をつける樹木の多くが、材密度が高く、巨木になる傾向がある。その結果、高い炭素貯蔵能力を持つので、defaunationによって熱帯林の炭素貯蔵能力を著しく低下させる可能性がある。ただし、森林破壊や森林劣化に対するREDD+など枠組みでは、現状、defaunationに対処できていない。陸の豊かさ保全(15)の視点からは、defaunationはそもそも森林破壊や森林劣化、さらには野生動物の過剰利用によって引き起こされているので、直結する内容。

DefaunationによりSDGs2、3、13、15の達成が危ぶまれるが、defaunationの研究は生態学的な側面に焦点を当てたものがほとんどで、他のアプローチが必要になっている。森林伐採はヒトが主体となって行うものであり、社会的・文化的側面を含めた形の研究を行うことが必要。ただし、地域の社会経済的・文化的背景、規範、制度、統治構造に大きく依存するので、そういったことを踏まえた保全アプローチを設計する必要がある。さらには伝統的な生態学的知識を活用すること、野生生物の商業取引の抑制や管理、気候変動対策の森林管理に動物も含めること、トレードオフがあることを認識すること、生物多様性損失のグローバル性の理解と取り組みなどが提言されている。
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