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鳥類に散布される果実色の進化における検出性の役割 [原著]

Tedore et al. (2022) The role of detectability in the evolution of avian-dispersed fruit color. Vision Research 196:108046
https://doi.org/10.1016/j.visres.2022.108046

鳥類に散布される果実の色彩の主要な機能が検出性の最大化であるとすれば、鳥類が散布する果実でもっとも一般的な色は、鳥類にもっとも検出されやすい色と考えられる。著者らが先行研究で開発したマルチスペクトルカメラを利用して、鳥類の視覚系(UVS:U, SU, M, and L conesとVS:V, SV, M, and L cones、それぞれピーク紫外線感度〜370と409nm)を再現して、野外の果実がどのような色に見えるのかを調べている。ただし、果実の色の進化には霊長類が関わっている可能性もあるので、霊長類がいないスウェーデンとオーストラリアを調査地として計63種の果実を撮影している。実際は83種を撮影したが、散布者不明や哺乳類型果実のデータは解析に利用していない。

果実の色は9つの色(red, purplish-UV, bluish-UV, pink, orange, orangish-red, blue, UVish-purple, purple)に分類されている。たとえば、青紫色は、鳥類の紫外線錐体が最も励起し、かつ青色錐体も強く励起する場合である。赤は最も一般的な色であり検出性が高いが、2番目と3番目に一般的な色である紫外光と青外光(ヒトが「黒」と呼ぶ色)は検出性が最も低い色である。後者の2色は、VS型の鳥類よりもUVS型の鳥類の方が感知しやすいが、両方の視覚系で最も感知しにくい色であった。UVish-purple、ピンク、オレンジなどのまれな果実の色は両方の視覚系で検出しやすい。含まれる種数が多い果実色と識別性に相関がないことから、識別性の最大化は果実の色の進化の主要な原動力ではなかったことが示唆された。

スウェーデンとオーストラリアの植物だと、属レベルであれば日本と共通している種も見られる。青い果実はElaeocarpus grandisとかAlpinia caeruleaなど、UVish-purpleはツルボラン科キキョウラン属のDianella atraxisとD. caeruleaが含まれており、いずれもオーストラリア産。なるほど、こんな紫のことをUVish-purpleとしているのか。日本のキキョウランもネット検索した限りは似たような色の果実らしい。一度見てみたいけど、南だなあ。
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