SSブログ

果実食鳥類の採食は低木果実の果皮の色とUV反射に関連している [原著]

Nagami et al. (2022) Frugivorous bird foraging is related to pericarp color and ultraviolet reflectance in fruiting shrub species. Journal of Forest Research
https://doi.org/10.1080/13416979.2022.2137095

鳥類は餌となる果実を探す際、可視光と紫外線の反射の両方を利用していると考えられる。特に果皮の色は、果実の成熟具合を判断するための正直な信号であることが示唆されている。本研究では、大阪公立大学付属植物園において、ヒサカキ、ネズミモチ、イボタノキを対象として、果実の糖度および光スペクトルを測定し、それらの果実を利用する鳥類を自動撮影カメラで記録することで、果実の成熟するタイミングと鳥類が採食するタイミングとの対応を見ている。

調査対象の3樹種はいずれも秋から冬にかけて黒っぽい果実をつける低木であり、自動撮影カメラを設置しやすい。また、日本国内やアジアでは被食散布型果実には黒色が多く、先行研究のYoshikawa et al. (2009)の情報からも採食記録が多い樹種に含まれている。果実の反射スペクトルの測定には分光光度計(FLAME-S-UV-VIS、OceanOptics社)と人工光源(DH-2000-BAL、OceanOptics社)、糖度の測定には糖度計(PAL-1、アタゴ社)を用いている。2020年10月から2021年1月にかけて、6-12日間隔で10個の果実を採集し、結実フェノロジーの進行と合わせて色の変化を測定している。自動撮影カメラはLtl-Acorn6210MCを利用しているけど、調査対象から2mの距離に設定して、ポールで固定しているので焦点距離の調整はしていない様子。センサー感度はHighで、60秒間の記録。

調査地内に130cmより大きな個体はヒサカキ224個体、ネズミモチ44個体、イボタノキ8個体。3種とも糖度はdarknessと相関するが、イボタノキではUCSとの相関が見られない。9種の鳥類が訪問し、6種(ヒヨドリ、ジョウビタキ、ツグミ、シロハラ、トラツグミ、メジロ)が果実を利用している。ヒサカキのある個体はツグミの群れがやってきたときに2000個以上の果実が食べられている。ただし、食べられるタイミングは種内・種間ともにかなりバラバラ。ただし、糖度がピークに達してから数日以内に消費量が最大になっているので、しっかり熟した果実を選んでいる様子。ヒヨドリが真っ先に来ているのは、よく知っているということか?

コメント(0) 

多様な果実食哺乳類に種子散布を依存するランブータンの一種Nephelium melliferum [原著]

Brockelman et al. (2022) Dispersal success of a specialized tropical tree depends on complex interactions among diverse mammalian frugivores. Global Ecology and Conservation 40: e02312.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2351989422003146

カオヤイ国立公園のMoSingtoプロットが設定されたばかりの頃から研究されてきたランブータンの一種Nephelium melliferumの種子散布に関する研究。カオヤイで研究されてきた植物の中でもシロテテナガザルへの依存度がもっとも高いと思われる植物の一つ。シロテテナガザルの餌植物として重要だし、種子散布にも貢献している可能性は指摘されていたが、結実規模が大きく年変動するので、調査対象としてはなかなか難しい。2004年から2022年にかけて、複数回の調査を行い、1)直接観察と種子トラップによる林冠での果実食、2)自動撮影カメラを用いた林床での果実食、3)種子散布距離の推定、4)種子の運命と発芽実験、5)実生の一年後の生残、の5項目を確認し、SDEの枠組みで、重要な種子散布者を明らかにしている。2020年の調査はコロナの影響で、調査地には入れなかったために途中で中断したらしい。

生産果実がどの動物にどのくらい食べられているのかを示した図1はシルエットの動物も本来のサイズに合わせている様子でわかりやすい。林冠で78%も食べられているが、ほとんどがリス類(49%)、シロテテナガザルが16%、キタブタオザルが13%。残り22%しか林床に落ちない様子。ただ、リスが利用した果実のほとんどは林床に落ちる点はアグライアともよく似ている。林冠ではリスとシロテテナガザルは結実期間を通してやってくるけど、キタブタオザルは群れが通過した時なので、短期間で大量に食べるイメージ。シロテテナガザルは種子も飲み込むので、体内滞留時間が長くなる。一方、キタブタオザルは頬袋にいれて、種子は吐き出すので、ほとんどが樹冠下に散布される。リスも同様。種子食害者の排除実験から、散布後の主な種子捕食者は昆虫ではなく、哺乳類であることを確認している。アジアゾウに壊されなかったのであれば、運がいいなあ。実生の生残については、林冠から10m離れると倍の生存率を示している。相対的に重要なのは、シロテテナガザル、次いでフィンレイソンリスというのがちょっと意外だけど、量的にたくさん利用することが影響している。特に小規模な結実個体では、シロテテナガザルよりもフィンレイソンリスの有効性が高い。結実規模が小さい個体には、テナガザルやブタオザルの訪問頻度が下がるからだろう。

ちょうど私が研究を始めたころに研究していた修士課程の学生の修論の内容も引用されており、懐かしく読んだ。
コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。