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移動性の高いオニハマダイコン属2種の世界的な分布を説明する [原著]

Shaw et al. (2021) Explaining the worldwide distributions of two highly mobile species: Cakile edentula and Cakile maritima. Journal of Biogeography 48:603-615.
https://doi.org/10.1111/jbi.14024

外来種として全世界に広がりつつあるオニハマダイコン属2種(Cakile edentulaとCakile maritima)を対象として、さまざまな原産地と定着先からサンプリングを行い、定着した回数、原産地の気候と定着後広がった場所の気候とを比較している。ハイスループットシーケンスとゲノムスキミング、さらにベイズ推定を組み合わせて、葉緑体ゲノム全体と核リボソームDNAの領域について、原産地と侵入地とでの変異を調べている。さらに各種のクレードが生育している地域の気候条件を調べている。GBIFデータも使っていて、同定に信頼のおける情報の地域に限り、気候条件を抽出している。

少なくとも7つのクレードが世界各地に侵入しており、そのほとんどについて原産地を特定することができている。定着先の気候条件は、原産地と近いものもあれば、本来の気候条件よりも広い範囲の場合も見られる。日本のオニハマダイコンとして、唯一、福井県のサンプルが含まれているんだけど、これがオーストラリアやニュージーランドとは全く異なるクレードに含まれている点がポイント。日本のサンプルが含まれるクレードA5の原産地はアメリカ東海岸の南側だけど、オーストラリアのクレードA9は北側で、明確に異なっている。

日本のサンプルの気候条件は原産地の範囲には含まれないけど、他地域の侵入先の気候条件の範囲には含まれているので、十分生育できるそう。日本への定着プロセスとしては、貿易ルートからアメリカ東海岸から西海岸のサンフランシスコ、それから太平洋を渡って日本という経路を想定している。東アジアのサンプルが日本しかないけど、周辺地域も同じ起源と考えてよいのかな。石川県のサンプルが福井県と大きく違うとは想定しにくいか。

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ナメクジによるアミメクロセイヨウショウロの胞子散布 [原著]

Ori et al. (2021) Effect of slug mycophagy on Tuber aestivum spores. Fungal Bology 125:796-805.
https://doi.org/10.1016/j.funbio.2021.05.002

ヤマナメクジの胞子散布に関連した研究に関わっているので、現状を知るのにちょうどよさそうな論文。地下に子実体を形成するトリュフの仲間では、空気中に胞子を飛ばすことは難しい。食菌性動物による被食散布によって、胞子が散布されると考えられており、哺乳類の中ではネズミ類、無脊椎動物の中では節足動物に注目されてきた。この研究では、ナメクジの胞子散布の可能性を給餌実験と食性調査から検討している。

ナメクジの一種Deroceras invadens(DNAバーコーディングで種同定)とハツカネズミを用いて給餌実験を行い、それぞれの動物が排泄した胞子の表面構造をSEMとAFMで観察し、アカガシワの実生に接種して、菌根形成を調べている。さらにトリュフ畑で採集したナメクジの腸内容物をDNAバーコーディングして、野外でもアミメクロセイヨウショウロを食べているのかどうかを確認している。

ナメクジの体内を通過することで、胞子の大部分が子のうから離れ、胞子の表面構造に変化が見られる。こういった変化があることで、コントロールと比べると菌根形成が起こりやすかったのではないかと考察している。またトリュフ畑のナメクジの腸内容物からも胞子が含まれていることが示されたことから、哺乳類や節足動物だけではなく、ナメクジもトリュフの仲間の胞子散布に貢献している可能性を示した研究。
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