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気候変動が植物と動物の相互作用に及ぼす影響の形質ベース評価 [意見]

Schleuning et al. (2020) Trait-based assessments of climate-change impacts on interacting species. Trends in Ecology and Evolution 35:319-328. https://doi.org/10.1016/j.tree.2019.12.010

気候変動が生物多様性に及ぼす影響を評価するような先行研究ではほとんど無視されてきた植物と動物の相互作用に注目した意見論文。形質ベースの枠組みを導入することで、気候変動に対する種間相互作用の反応を予測することを狙っている。具体的には、空間的・時間的ミスマッチ、新規の相互作用と二次的な絶滅、植物の移動能力の改変の3つの経路を想定して、それに対応する機能形質についてまとめている。

気候変動に対する動物と植物の間の空間的・時間的ミスマッチは、例えば、相互作用が見られる動物と植物の温度耐性の違いとかで生じてくる。動物と植物相対的な数が変化したり、どちらかが絶滅したところへ、新しい種が分布を広げた結果として生じた相互作用によって軽減されたり、温度変化に素早く反応して、あまりミスマッチが生じなかったりということが考えられる。また気候変動によって新しく相互作用が結ばれる場合もあれば、必須のパートナーを失うことによる二次的絶滅につながる場合もある。例としては、送粉系を取り上げており、ある花に特殊化した送粉者が花の絶滅にともなって絶滅する場合や別の花種が移入することで、新たな関係を結ぶ事例などを想定している。最後は大型の種子散布者を喪失することで、散布カーネルが大きく変化して、長距離散布の可能性が減少することで、植物の移動能力が低下するようなことを想定している。

これら3つの経路にかかわる機能形質として、response trait、matching trait、dispesal traitをあげて、これらを用いて、気候変動の影響を予測する枠組みを提案している。
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複雑な景観における遺伝分散の研究について:コメントへの反論 [意見]

Garcia et al. (2009) On gene dispersal studies in complex landscapes: a reply to the comment on Garcia et al. (2005, 2007). Molecular Ecology 18:4536–4540

ヘレラのコメントへの反論で、責任著者はJordanoになっている。反論ポイントは、調査地内の樹木の繁殖動態が異なる、調査地は空間的に隔離されている、先行研究の実験デザインとマーカー多型から推定した親子判定結果はロバストであるの3点。

ヘレラが2008年にマークした個体の大部分はJordanoチームがデータを収集した1996-1997年時点では繁殖個体ではなかったらしく、Jordanoチームが稚樹として記録していた個体が含まれていた。その後、稚樹が成長して繁殖個体に達したので、調査当時には繁殖していなかったらしい。また、ヘレラの見つけた繁殖個体の大部分はJordanoたちの調査対象とは異なる集水域に属しており、繁殖フェノロジーがかなり異なる個体群であるため、交配可能性も高くはないだろうと述べている。

潜在的な親個体をどのくらいしっかりとサンプリングできているのかについては、オリジナルのデータセット、そのうちの一部、追加データを加えたものの3つのデータセットを用いて、前提条件を変えて親子判定を行い、いずれのデータセットにおいても先行研究の結果とは大きく異ならない点を強調している。

ヘレラが勘違いしている点もあるけど、Jordanoチームがきちんと説明していなかった点もあるのかな。

Prunus mahalebの交配パターンと遺伝分散に関する論文へのコメント [意見]

Herrera (2009) A comment on Garcia et al. (2005, 2007) and related papers on mating patterns and gene dispersal in Prunus mahaleb. Molecular Ecology 18:4533–4535.

何気なくHerreraのサイトをのぞいたら、Jordanoチームの研究にコメントしているので読んでみた。Jordanoチームの研究は実際に国際学会などでも聞いたことがあるし、論文もいくつか読んでいる。隔離個体群のすべての親候補(196個体)をリストアップした研究で、遺伝マーカーを種子散布に応用した研究としては最先端を走っているグループ。

先行研究ではJordanoチームの調査個体群から最も近い個体群は1.5kmとされており、その圏内の繁殖個体はすべてサンプリングされていると述べられている点へのコメント。ヘレラがその周辺1.5km圏内で300個体以上の潜在的な繁殖個体を確認しており、これまでのPrunus mahalebに関連した研究の結論の妥当性に問題があるのではないかという点。

両親候補を十分にサンプリングしていない場合の問題点としては、両親候補として決定された個体が過大評価される点と、マッチングしなかった個体を周辺個体群以外の長距離散布として解釈している点。散布された種子の20%が1.5km以上遠くからの長距離散布だと解釈されているが、実際は周辺個体群の未サンプリング個体から散布された可能性がある。

ということで、この個体群を対象とした研究の解釈には注意しないといけないとのコメント。コメントの最後に引用している一文がなかなか強烈で、i.e. spend more time in the field。いや、そうですとも。でも誰か詳しい人が解説してくれないかな?

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