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樹木の葉の表(向軸側)から発する緑青色蛍光の特徴 [原著]

Nakayama & Iwashina (2017) Characteristics of green-blue fluorescence generated from the adaxial sides of leaves of tree species. Journal of Plant Research 130:301-310.

日本の動物散布に関連していて、Journal of Plant Researchに掲載されていたにも関わらず、Corlettさんの総説を読むまで存在に気がついていなかった論文。果実の紫外線反射については、これまでも幾つもの先行研究が知られているが、果実そのものではなく、一部の樹木では、葉表から緑青色蛍光を発することで、果実食動物にアピールしている可能性を指摘している。

対象は国立科学博物館の筑波実験植物園内に生育する日本在来の47科141種の葉をサンプリングして利用している。さらにヒメアオキについては、別途、果実が付いた枝もサンプリングしている。暗条件下でサンプリングした葉にUVを照射し、代表的な葉を3枚選択して、デジカメで撮影し、蛍光の輝度をL*という指標で評価している。その他に葉をミクロトームで切断して、蛍光顕微鏡で観察したり、分光蛍光光度計でスペクトルを測定したりしている。

Fig. 1に一見すると同じようにピカピカしている8種の樹木の葉が並べられているけど、これが紫外線下ではツバキだけが明るく見えている。141種のうち、このような明葉をもつ樹種はツバキ、サザンカ、サカキ、アオキ、ネズミモチ、ヒイラギ、ヤマグルマ。ツバキ科が多いけど、ツバキ科の中でもナツツバキのように暗葉しかない樹種もある。常緑性が関係しているのかとも思ったけど、モッコクは暗葉。アオキとサカキは明葉と暗葉の二型があり、ヒメアオキを利用して、より詳細な比較を行っている。ヒメアオキの明葉と暗葉では、形やサイズには明確な違いは認められない。サカキでは新しい葉は暗葉、古い葉が明葉なので、ヒメアオキでも葉寿命が関係していそう。

鳥にも同じように見えているのであれば、アオキとか、人の目にはテカテカで同じように見える葉っぱが実は明葉と暗葉が組み合わさって、とても目立っている可能性があるなんて素敵。ただ、ヒメアオキの雄株も同じようなパターンを示すのだろうか?雌株だけに見られるのなら、おもしろそう。

というわけで、執筆中の論文でさっそく引用する予定。
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土中の花粉から雌雄異株植物の性別を判別する [原著]

Sugiyama et al. (2017) The use of soil pollen to determine the sex of overhead individuals of a temperate dioecious shrub. American Journal of Botany 104:632-638.

雌雄異株の植物個体の性別を決定するには、開花期に花を観察するのが一般的。開花時期が限定されている植物もいれば、観察時に開花しない個体もいるため、対象個体の性別を決めるのは意外と面倒。この研究では、アオキを対象として、1)虫媒花であるアオキの花粉が土中に存在しているのか、2)土中に含まれるアオキの花粉量はメス個体よりもオス個体で多いのか、の2点について検討している。

調査地は茨城県の牛久自然観察の森で、林床のアオキが調査対象。アオキは虫媒花をつけ、風媒の植物ほどは花粉を生産しないが、それでも雄花をつける雄個体の下には、メス個体よりも多数の花粉が落下するとの仮定は不思議ではない。2015年12月にメス10個体(果実から判定)とオス10個体(2016年3月に再訪して雄花を確認)の直下の土壌(O層とA層の2箇所×3方向×10個体×2性別)を計120サンプル採取している。O層は2-3年前の花粉の集積、A層は10年前までくらいの花粉の集積を反映していると考えている。これらのサンプルに含まれる花粉数を計数して、比較している。

大量のスギなどの風媒植物の花粉に混じって、O層とA層の両方から風媒植物と比べると数は少ないものの、アオキの花粉が見つかっている。また、どちらの層でもメスよりもオスの下で花粉数が多い。この花粉数の情報から、ロジスティック回帰を使って、雌雄判別してみると比較的高い値で正しく予測できている。オス個体の開花数はいずれの層の花粉量ともに相関が見られない。しかし、オスの樹高とはO層では正の相関があり、A層では相関が見られない。1回の開花数では、明確ではないけど、大型個体の直下だと貯まる花粉が多いのか。

分子情報を使ったりすればより正確に性別を決めることができる場合もあるけど、この研究で提示された方法はシンプルで簡便なので、熱帯とかでも使いやすそうな点が良い。というか、こんな研究していたんですね。
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