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追熟型果実と非追熟型果実の進化生態学 [原著]

Fukano & Tachiki (2021) Evolutionary ecology of climacteric and non-climacteric fruits. Biology Letters 17: 20210352.
https://doi.org/10.1098/rsbl.2021.0352

果実とそれらを利用する動物との間に見られる果実シンドロームは古くから知られていて、さまざまな果実形質(色、サイズ、匂い、栄養、防衛物質)とそれらを利用する動物との対応関係が調べられてきた。この研究では、これまで検討されてこなかった果実の追熟の有無に注目して、種子散布者との関係性を検討している。具体的には、追熟型果実は地上で採食を行う動物、非追熟型果実は樹上で採食を行う動物に対する適応ではないかを80種の果実の形質とそれらの種子散布者の文献調査から検討している。ただ、有効な種子散布者が特定されている植物は多くはない。そこで、潜在的な種子散布者となる動物の分類群を組み合わせた複数のデータセットを作成し、それらを解析することで同様な傾向が見られるかどうかを検討している点が解析上のポイントになっている。

結果はシンプルで、系統関係に関わらず複数の分類群で追熟型の果実をつける植物が見られる。また追熟型では地上性の動物に種子散布されている割合が高く、非追熟型では樹上性の動物に種子散布されている割合が高いので、仮説を支持する結果。この研究の仮説とは逆のパターンを示している植物では(追熟型なのに樹上でも食べられている、非追熟型なのに地上でも食べられている)、面白いことが隠されているかもしれないと妄想が膨らむ。

最初にSNS上で情報を見かけたときには、これ何が新しいんだっけ?と思い、その次にJanzenが何か書いていなかったっけ?と思った。確かにJanzenの論文はイントロで引用されているけど、その後、誰も検証していなかったということらしい。果実形質と種子散布者の関係はわたしもいくつも論文に関わってきたけど、確かに追熟の有無を考慮した論文を読んだ記憶はないし、査読した記憶もない。イチョウの論文書くときに哺乳類しか記録されなかった理由の一つとして、引用すればよさそう。まあ、柔らかくなってからも食べられない理由にはならないけど。

カオヤイで見ていたカンラン科Canarium euphyllumは黒っぽい果実で、樹上ではサイチョウ類が食べて、落果は哺乳類が食べる。果肉は硬くって、落果後しばらく放置すると柔らかくなる点では追熟型。ただ、宿舎に持ち帰って実験処理しようとしていた果実をスイロクに食べつくされたことがあるので、硬いままでも結構食べてしまう。Canaiumの仲間は緑色の果実で、落果後に哺乳類が食べるものが多く含まれているので、本来は追熟型なんだろう。
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