SSブログ

ジャワオオコウモリの行動圏は国境を超える [原著]

Epstein et al. (2009) Pteropus vampyrus, a hunted migratory species with a multinational home-range and a need for regional management. Journal of Applied Ecology 46:991-1002.

渡りを行う動物の保護には、複数の国の協力が必要になるが、実際は渡りのルートなどの詳細が知られている動物は限られているのが現状である。この研究では東南アジアに広く分布するジャワオオコウモリのうち、半島マレーシアにねぐらをもつ個体を衛星追跡した結果、マレーシアだけではなくタイ南部やスマトラ島にも移動していることを明らかにしている。

さらにマレーシアでの狩猟圧の増加が、タイ南部やスマトラ島の個体群にも影響を及ぼす可能性を指摘している。単に渡りのルートを明らかにしただけではなく、人間による狩猟の影響を動態モデルで解析しているところが評価されたのだろう。マレーシアではジャワオオコウモリの狩猟は免許制(ただし捕獲個体数に制限はない)で、農地での害獣駆除による捕獲数は不明なことから、過剰に捕獲されている可能性が高い。

ねぐらから採餌場所への移動距離が最大87.5キロ、2時間で130キロを移動しており、移動能力の高い生物であることがわかる。Perakで捕獲した個体が2004年7月から9月にかけてタイ南部を訪れている。この時期はタイ南部で大規模な開花が生じていた時期と重なる。わたしがナラチワの森を下見でいろいろ見て回っていた時期と重なり、どこかで出会っていたのかもしれない。同時期にはPerakのねぐらではほとんどの個体が観察されていないことから、大規模な移動をしていた可能性が高い。

個体数モデリングが主体の論文ではあるが、衛星追跡により明らかにされた移動パターンは長距離散布の可能性を示唆するに十分な内容を含んでいる。
コメント(0)  トラックバック(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。