SSブログ

ボルネオのテナガザルと他の果実食動物との競争とニッチ重複 [原著]

Chapter 9, Marshall et al. (2009) Competition and niche overlap between gibbons (Hylobates albibarbis) and other frugivorous vertebrates in Gunung Palung National Park, West Kalimantan, Indonesia. In Lappan & Whittaker (eds) The gibbons: New perspectives on small ape socioecology and population biology.

ここ最近、グヌンパルンのテナガザルの論文を立て続けに出しているMarshallさんの研究。テナガザル以外の果実食データが掲載されている貴重な研究。ここでは1984年から何度か中断をはさみながら、テナガザルの研究が行われている。テナガザルと他の果実食動物との食性の比較、テナガザルの競争者となる果実食動物は何か?、採食ニッチがどの程度重複しているかを検討している。

残念ながら生データは掲載されていないので、具体的にどの種がどの果実を食べていたのかは不明。1985年3月から1992年3月までに収集された4090回の採食記録に基づいており、半分がルーチンの脊椎動物のセンサス、半分が別の調査中に観察された記録だが、結実木での観察データは抜いてある。食性の特化具合は元のデータを無作為抽出して、対象種と同数のサンプルを選び、その分布と実際の値を比較している。元の分布から離れるほど、より特殊な果実を利用していると考えている。私の最初の論文を投稿した時に同じような解析方法を提案されたが、コレットさん以外のレフリーはこの人だったのかも?

テナガザルともっとも似た食物を利用しているのはミケリスCallosciurus prevostiiで、それにオランウータン、オナガザル、アカコロブスと霊長類が続く。この辺までが食性の類似度が40%を超えており、残りは30%以下である。オナガサイチョウとの重複が低いのは、オナガサイチョウがほとんどイチジクに特化しているためだろう。同じような解析を果実が豊富な時期と少ない時期、泥炭林とそれ以外の林で別々に解析を行っているが、傾向はそれほど変わらない。

ちょっと面白いかも?と感じるデータは、サイチョウは一斉開花時になると利用する果実の種数が増えるが、霊長類はあまり変化しない点。霊長類は移動せずに好きなものを食べまくるが、サイチョウはいろいろと食べる点。この辺、詰めると意外と面白いかもしれない。

コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。