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ボルネオのフタバガキ林におけるテナガザルの種子散布ニッチ [書籍]

Chapter 10, McConkey (2009) The seed dispersal niche of gibbons in Bornean dipterocarp forests. In Lappan & Whittaker (eds) The gibbons: New perspectives on small ape socioecology and population biology.

テナガザルが好む果実タイプを明らかにし、次に果実パッチサイズ(DBHで代用)との関係、最後に他の果実食動物とのシードシャドウの違いを検討することで、種子散布者ギルドにおけるテナガザルの特徴を明らかにしようと試みている。McConkeyさんがテナガザルの研究をしていた時の未発表データとボルネオの先行研究を組み合わせ、定性的な解析を行った研究。

対象はボルネオのフタバガキ林に生息する主要な果実食動物16グループ(ボルネオオランウータン、テナガザル2種、オナガザル2種、ミケリス、マレーグマ、ジャコウネコ4種、コウモリ11属、サイチョウ8種、ゴシキドリ8種、ハト類、クロカケス、ミドリヒロハシ、ルリコノハドリ、ヒヨドリ16種、コノハドリ3種、ハナドリ4種)。めったに地上に降りないテナガザルとの比較を念頭に置いているので、地上性のシカ類、キジ類、げっ歯類などは調査対象から外している。

果実タイプは、bird-fruit(Myristica、Macaranga、Hydnocarpusなど)、primate-fruit(Willughbeia、Nephelium、Zizyphusなど)、generalist-fruit(Prunus、Roureaなど)、others(上記3グループ以外)の4つに区別して、Othersにはコウモリが主に散布する果実も含まれている。テナガザルが利用する果実19種の結実木を各7-26時間観察したデータもあったらしい。この辺の詳細なデータが見たいところ。

テナガザルの種子散布者としてのユニークさは果実パッチが小さいprimate-fruit、特にツル植物の果実を丁寧に探して食べている点ではないかと考えている。ツル植物の小さい果実パッチを利用するのは、小型のサイチョウ類でも同じだが、primate-fruitはあまり利用しないので重複は少ないだろう。ただし、ジャコウネコはツル植物の果実をかなり利用しているので、その辺の効果を過小評価している可能性はある。

Chapter 9とあわせて読みたい。

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