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Biotropicaの狩猟特集号2 [原著]

Nunez-Iturri & Howe (2007) Bushmeat and the fate of trees with seeds dispersed by large primates in a lowland rain forest in Western Amazonia. Biotropica 39:348-354.

Howeの学生がブラジルで行っている研究というのはこの研究のことでしたか。ペルーのCocha CashuだからJ. Terborghの調査地で2箇所の保護区と外の1箇所の計3箇所で稚樹を対象とした調査を行っている。

狩猟圧がある森では、大型霊長類はほぼいなくなり、中型霊長類も80%まで減少しているが、小型の霊長類や夜行性の霊長類では差が見られない。それらの狩猟圧がある森では、大型霊長類に種子散布される樹種(種子サイズが15mmより大きい)の樹冠下における稚樹の種多様性が55%にまで減少し、大型霊長類や中型霊長類によって種子散布される樹種でその現象が著しい。さらに狩猟されない動物によって散布されない種は増加傾向が認められている。

さらっと調査対象としている稚樹の種数が大型・中型霊長類に種子散布される種で106種、狩猟対象ではない動物に種子散布されるのが497種、非生物散布が85種と書いてあるけど、それだけ基礎情報が蓄積されているからこそ可能な研究。確かにこういったデータを見せられると、empty forestやhalf empty forestとよばれる概念が生み出されたのかもしれないと思う。ここでは小型霊長類が増えてはいないし、小型霊長類は主に小型の種子をつける果実を利用するということで、結果がこのようにクリアーに出てくるらしい。
 

Dirzo et al. (2007) Size-related differential seed predation in a heavily defaunated Neotropical rain forest. Biotropica 39:355-362.

かなり哺乳類側に偏ったイントロだけど、参考になる書き方。IUCNで取り上げられている種が1372種にも及ぶとは。調査地はメキシコのLos TuxtlasでEstradaやCoates-Estradaが研究していたサイトで、過去20年間にかなり大型哺乳類が減少してしまったらしい。

さまざまなサイズの種子を用いて、残存する小型哺乳類を対象とした給餌実験(21種)と野外に設置した種子の持ち去り実験(11種)を行っている。いずれの実験でも、小さい種子が好まれる傾向は一貫しており、種子重が3gをこえる種子では、ほとんど持ち去られていない。モリポケットネズミは東南アジアのMaxomys suriferより一回り小さいようなので、体サイズの影響が出ているのだろうか?てっきり、大型の種子の方が種子食害率が高くて、大型動物が喪失する影響を受けやすいと思っていたのだけど、必ずしもそうとは言い切れないのか。


Wright et al. (2007) The bushmeat harvest alters seedling banks by favoring lianas, large trees, and seeds dispersed by bats, birds, and wind. Biotropica 39:363-371.

こちらは2005年のシンポジウムで話していた内容とほぼ同じ。狩猟が林床の実生バンクに与える影響としては、1)、大型種子をつける植物の種子食害者が減少し、2)狩猟対象ではない動物や物理的に種子散布される種では、狩猟の影響がなく、3)風散布型が多いツル植物が増加する、などの予測をたてている。

調査地はBICとその周辺で、何度も論文に掲載されているところがほとんど。実生の調査を群集レベルで行うことができるのはBCIの強み。38,170個体の実生のうち94.5%は種レベルまで同定できるなんてうらやましい。科レベルまで同定できなかったのは2.36%しかないのか。
 

Muller-Landau (2007) Predicting the long-term effects of hunting on plant species composition and diversity in tropical forests. Biotropica 39:372-384.

理論的な研究を行う人をうまく組み込んでいるのは新熱帯の研究の強いところ。理論がメインではあるけど、ミニレビューのような感じに先行研究を上手にまとめてある。種子散布が減少することで植物個体群に与える影響を、kin selectionの増大、天敵への脆弱性の増加、腸内通過種子の減少の観点から見ることで、次世代の個体群への影響を調べている。

結局、狩猟による植物の繁殖への影響を評価するには基礎情報がまだまだ足りていないのが現状。正確な将来予測を行うだけの基礎研究が行われているのは一握りの個体群に過ぎない。人為的攪乱の影響を知るには基礎情報が必要である点を強調している点は納得。


Stoner et al. (2007) Hunting and plant community dynamics in tropical forest: A synthesis and future directions. Biotropica 39:385-392.

狩猟の影響を調べるときの問題になるのはそれ以外の要因によって、種子散布過程に影響が及んでいる場合。特に調査区が既に分断化されている場合はその影響が強いので、この論文では100ha以下の面積の研究は除いている。

狩猟によって大型の種子散布者が減少すると、大型種子をつける植物の除去率は下がることは以前から指摘されていたけど、同時に種子食害者も減少することで、結果的に実生は増加する傾向を報告している研究が増えてきている。脊椎動物だけではなく、無脊椎動物、特に種子食害を行う昆虫への間接効果も考慮すると、かなり複雑な現象。いずれにしても、こういった研究が行われているのはほとんどが新熱帯で、そこで見られる現象が他の熱帯でも当てはまるかは別問題。


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