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Biotropicaの狩猟特集号1 [原著]

Wright et al. (2007) The plight of large animals in tropical forests and the consequences for plant regeneration. Biotropica 39:289-291.

BiotropicaのSpecial sectionに掲載された10本の論文のイントロ。2005年夏にブラジルで開催されたATBCのこれだけまとまって掲載されていると引用しやすい。タイトルは熱帯林における大型動物の苦境ですか・・・。そうかもしれんな。調査地の言語で書かれた要旨はネット上で公開されるようになったのですな。
 

Corlett (2007) The impact of hunting on the mammalian fauna of tropical Asian forests. Biotropica 39:292-303.

東南アジアにおいて狩猟による大型哺乳類への影響をまとめられた最初の総説。体重の一覧インドネシアに棲息する動物に関しては、Life after loggingでかなりカバーされているけど、タイトルどおり伐採の影響に主眼が置かれているので、ちと違う。去年の5月の段階で既にこのような論文を書いていたからこそ、7月の学会での発表内容が充実していたのですな。

東南アジアといっても古くからの情報が残っているのは中国ぐらいで、他の地域に関しては狩猟がどのくらい行われていたのか、また商業取引とのかかわりなどの情報は非常に少ない。内容的にはあくまで植物学者としての観点から書かれており、私なんかは非常に読みやすいのだけど、実際に大型哺乳類の保全活動を東南アジアで行っている人の感想が知りたいところではある。

それにしても1940年代の文献まで丁寧に拾っており、毎回良く調べてあると思う。勉強になります。他の熱帯では人間の狩猟圧による絶滅は多数の大型動物において知られているけど、東南アジアでは不明なのでは研究が行われていないだけなのか、それとも別の理由があるのだろうか。

 

Peres & Palacios (2007) Basin-wide effects of game harvest on vertebrate population densities in Amazonian forests: implications for animal-mediated seed dispersal. Biotropica 39:304-315.

新熱帯で狩猟の影響を評価した研究はいくつもあるけど、調査地や調査対象によって傾向がさまざまなだけにこういったメタアナリシスを行うだけのデータが収集されている新熱帯は強い。特に霊長類では個体数推定なども非常に幅広い分類群で行われているからこそ可能。

自分たちが大規模に行ったラインセンサスデータに先行研究の情報をくわえて、101箇所もの調査地を対象としている。狩猟圧を(0、Low、Medium、High)の4つのカテゴリーに分類し、カテゴリー間で調査地間ペアを作成することで個体数変化を比較している。half-empty forestに関連した話が考察でまとめられており、McConkeyの論文はさすがに引用されている。東南アジアでもサイチョウは比較的多くの場所でラインセンサスなどが行われているから、こういった形の研究に発展させることができると良いけど、今のところネットワーク化はうまく働いていない。
 

Stoner et al. (2007) The role of mammals in creating and modifying seedshadows in tropical forests and some possible consequences of their elimination. Biotropica 39:316-327.

哺乳類の種子散布に関連した文献を広範囲にわたって収集しており、3熱帯間での比較も試みている。最後に大型動物を狩猟することによる森林更新への影響をまとめている。ただ、Corlett (1998)とくらべるとインパクトが弱いのと、文献の読み込みが甘い感じがする。

カオヤイにおいてジャコウネコ科の動物による種子散布は確かに重要だと思うけど、3番目に重要はグループなんて書いた覚えはない。機能グループごとに比較すれば利用している果実の種数は3番目になるからそういう風に引用したのだろうか。旧熱帯地域における大型哺乳類による種子散布の研究が少ない点を指摘している点では引用するには便利かも。
 

Beckman & Muller-Landau (2007) Differential effects of hunting on pre-dispersal seed predation and primary and secondary seed removal of two Neotropical tree species. Biotropica 39:328-339.

パナマだけどBCIだけではなく、周辺の狩猟圧がかかっている森林を比較対象として用いている。大型の種子をつける植物では狩猟圧によって果実食哺乳類が減少することで種子散布過程に影響が及びやすいといわれている。

この研究では、種子サイズが異なるヤシ科Oenocarpus mapocaとドクダミ科Cordia bicolorの2種で種子の持ち去り、散布前種子捕食、二次散布を調べている。予測とは異なり、この研究では狩猟圧が高い森では種子サイズが小さいほうで持ち去りが減少し、種子サイズが大きいほうでは変わらない。確かに大型種子で影響は出やすいとは思うけど、必ずしも全ての種に同じ論理が当てはまるわけではないからなあ。この論文、ちょっと図表が大きすぎる気がする。
 

Wang et al. (2007) Hunting of mammals reduces seed removal and dispersal of the Afrotropical tree Antrocaryon klaineanum (Anacardiaceae) Biotropica 39:340-347.

この特集でも頻繁に引用されているTREEのWang & Smith (2002)を書いた著者によるカメルーンでの哺乳類による種子散布研究。Dja保護区周辺の原生林と狩猟が行われている森とで種子散布効率を比較している。狩猟圧が高い森では、1)種子散布動物が減少しているか?2)結実木の下に散布されない種子が多く見られるか?3)結実木とその樹冠下にある種子には親子関係にある率が高いか?の3点に着目している。

それにしても果実食動物の調査努力は半端でない。調査方法はPoulsen et al. (2002)を踏襲しており、1999年に640km(狩猟あり)と1727km(狩猟なし)、2004年に43kmと105kmも歩いている。種子のサンプルはそれ程多くないものの、延べ133個の種子の親子判定を行っている。プライマー論文はまだ投稿していないが十分な多型があるらしい。狩猟圧が高い森では、霊長類の個体数は夜行性の種をのぞいたほとんどの種で減少し、落果種子量と当年生実生の数は圧倒的に高く、結実木と同じ個体の種子が多い傾向がクリアーに現れている。

野外調査がメインだった人がマイクロサテライトまで用いるようになっているとは。サンプル数は少ないけど、よくまとまっている研究だと思う。


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