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自動撮影カメラを利用したボルネオ熱帯雨林の樹上性哺乳類のインベントリ [原著]

Haysom et al. (2021) Life in the canopy: Using camera-traps to inventory arboreal rainforest mammals in Borneo. Frontiers in Forests and Global Change
https://doi.org/10.3389/ffgc.2021.673071

ボルネオの熱帯雨林で自動撮影カメラを利用して、伐採の有無と地上と樹上で記録できた哺乳類を比較した研究。伐採履歴を環境傾度として、自動撮影カメラで哺乳類相を比較するアプローチはよく行われている。ただし、伐採された森で意外と哺乳類の種多様性が高い理由の一つとして、本来、樹上性の傾向が強い哺乳類が、地上もよく利用するようになった可能性もある。自動撮影カメラで林冠を利用する哺乳類相を扱った研究はアフリカと新熱帯で5つあり、そのうち3つは樹上と地上の両方を扱っているが、東南アジア熱帯では、本研究が初めて。

調査地はMaliau Basin(伐採なし)とMt. Louisa(伐採あり:1978~2008)の2か所の調査地。伐採履歴のある森の方が、樹高が低く、林冠の閉鎖率が低く、樹上の通り道も少なく、林冠ギャップが多いという特徴がある。調査期間は2017年10月から2019年9月までの2年間で、各設置場所では7-8か月。自動撮影カメラはReconyxのHyperfire HC500(一式で464ドル、高い)を利用して、1.5km平方に1組を設置している。地上は地表0.3m、樹上は平均36m(伐採なし)と19.3m(伐採あり)の高さに設置している。誤作動を避けるためにカメラは幹に設置して、感知エリアの葉などは除去している。樹上のカメラは北か南に向けることで、露出オーバーを避けている。一度に3枚の静止画を撮影する設定で、撮影インターバルの設定はしていない。ただ、解析上は30分間空いたものだけを独立データとして扱っている。

計15817CTNで、哺乳類55種8008枚が撮影された。30種は地上のみ、16種は樹上のみで撮影され、9種が両方で記録されている。ただ、追加で設定していた樹上のカメラデータも入れると樹上で18種が記録されている。多変量解析などの結果も明瞭に地上と樹上が区別される結果。面白いのは、調査コストを計算しているところで、樹上50台と地上50台のコストと地上100台のコストを計算していて、前者が約10,980ドル、後者が4,920ドルと約2倍のコストがかかる。でも2倍ですむなら、調査する価値はあるんじゃないかな。

最近はiNextパッケージでRarefaction curvesを描いた論文を読むことが多いので、一度使ってみよう。
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