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ブラジルの季節林では、在来の種子散布者がケンポナシの分布拡大を促進する [原著]

De Lima et al. (2015) Native seed dispersers may promote the spread of the invasive Japanese raisin tree (Hovenia dulcis Thunb.) in seasonal deciduous forest in southern Brazil. Tropical Conservation Science 8:846-862.

動物散布型の果実をもつ外来植物の拡散には、侵入先の種子散布者の構成が大きく影響する。ケンポナシは種子の周りに果肉がなく、果柄部が甘く肥厚している特異な果実形態をもつ植物で、山形県では、タヌキ、ハクビシン、ニホンザル(小林・林田 2014 東北森林科学会誌 19:41-50)、石川県では、ニホンカモシカ(八神 2011 石川県林業試験場報告43:36)がケンポナシの種子を散布していることが知られている。中国で結実木を観察した結果からも哺乳類散布の植物とされている(Zhou et al. 2013 Annals of Botany 112:85-93)。この研究では、ブラジルで外来種として広がりつつあるケンポナシの種子散布者を自動撮影法と直接観察で記録している。さらに調査地内の糞内容分析から、ケンポナシの種子の有無を確認し、発芽実験を行っている。

自動撮影法では、2012年と2013年の4月から9月に結実木周辺で落果を対象としたものが8か所、地上2mのところに設置したプラットフォームが2か所、計10か所で果実消費動物を記録している。結実木での直接観察は結実ピークの7月と8月にのべ48時間の観察を行っている。さらに排除実験により、コントロール、大型動物のみ、小型動物のみの実験区を設定して、どの機能群の動物が果実消費に貢献しているのかを調べている。また、糸つけ法により、ケンポナシの果序の追跡調査も行い、糞内容分析により、調査地内のトレイルを歩いて見つけた糞からケンポナシの種子を探している。侵入したばかりの外来種の場合は、供給源が限定されるので、ある程度、種子散布距離を推定できる可能性もあるのは、研究対象として便利なところ。

自動撮影法では、2305カメラ日の調査により、16種の鳥類と12種の哺乳類が記録されている。さらに直接観察で2種の鳥類が追加されて、のべ30種の動物が調査中に記録され、そのうち、少なくとも哺乳類4種、鳥類3種がケンポナシの果実消費者として記録されている。鳥類の記録はクロアシシャクケイPenelope obscuraがほとんど。まあ、食べそうだな。オオハシ類は食べないらしい。排除実験はいずれもコントロールと変わらず、どの機能群も果実消費に貢献しているらしい。糞から見つかった種子からも発芽するので、在来の鳥類や哺乳類も種子散布に貢献している。

確かに熱帯の変な果実っぽい雰囲気もあるし、結実期間もかなり長い。何より甘いので、食べる動物はいろいろいるんだろうな。

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