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ボランタリー炭素市場を用いた種子散布損失の経済的影響評価 [原著]

Bello et al. (2021) Valuing the economic impacts of seed dispersal loss on voluntary carbon markets. Ecosystem Services 52:101362.
https://doi.org/10.1016/j.ecoser.2021.101362

2012年創刊の新しい雑誌だけど、種子散布関係の論文もチラホラ見かける。このグループはdefaunationの研究を世界的にもリードしているが、その経済的な価値を炭素ベースで評価することを試みている。果実食動物がいなくなると炭素隔離に貢献している大型種子をもつ樹木の種子散布に影響を与えると予測されている。本研究では、3種の大型の果実食動物に注目して、これらの種子散布機能を喪失することで、どのくらいの影響になるのかを炭素ボランタリー市場価格を利用して評価している。

対象動物は霊長類2種(ウーリークモザル、カッショクホエザル)と大型鳥類1種(カオグロナキシャクケイ)。いずれも主要な果実食動物。大型種子をつける樹木でクスノキ科のCryptocarya mandioccanaをモデルとしてDefaunationの影響を検討した先行研究(Culot et al. 2017)の結果を利用している。先行研究では、種子散布者と種子捕食者が減少するレベルに合わせて、どの程度、本種の更新過程に影響が及ぶのかを評価している。また本種は大型種子で材密度が高く、大型動物に種子散布を依存している。種子サイズ、樹高、材密度には正の相関関係があることから、本種と同じ特徴を持つ樹種に拡張することで、森林への影響を評価している。

シミュレーションでは、先行研究の調査地3か所の毎木調査データを活用している。そのうち、モデル樹種と同様な散布形質をもち、3種の種子散布者が利用する植物を選択している。最終的には、種子サイズが12mmを超える14種1077個体の樹木(全体の8%)が対象になっている。さらに炭素貯留量の減少をシミュレーションするために各散布者が絶滅したシナリオと種子捕食者がすべている場合、大型がいない場合、大型と中型がいない場合の3段階で計算して、炭素の取引価格に換算している。

イントロ部分で送粉や野生動物観察などの生態系サービスの経済的価値を評価した研究や種子散布を対象とした研究(トウガラシ、ドングリなど)がまとめてあるので、一通り読んでおきたい。たまにしか読まないから気にしていなかったけど、この雑誌、IFは5を超えているんだ。
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