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果実の利用可能性と生息環境の分断化の関係 [原著]

Vergara et al. (2010) Frugivory on Persea lingue in temperate Chilean forest: interactions between fruit availability and habitat fragmentation across multiple spatial scales. Oecologia (in press)

森林の分断化や劣化などの人為的撹乱が種子散布に与える影響を検討した研究からは、負の影響が指摘されてものが多い。この研究では、果実量効果、生息地の劣化-分断化の効果、非線形な果実量効果の3つの仮説とそこから導かれる予測を検討している。

調査対象としているPersea lingueはアボガドを小さくした果実で、サイズは14-17mmとめちゃくちゃ大きな果実というわけではない。多種の果実がほとんど結実していない時期に果実をつけるので、単純にこの種の果実の影響を評価することができるらしい。そんな恵まれたシステムなのか…。ただ、ある程度の個体数がないと、その地域から果実食動物がいなくなる可能性もある。

20x15kmの調査区内にある分断林を面積によって大(>30ha)・中(5ha>、<30ha)・小(5ha<)の3つのカテゴリーに分類し、それぞれ10箇所を調査地として設定している。各調査地から2本の結実木(1本はエッジ、1本は中央部)を選択して、調査対象としている。各調査地内で、平均樹高やDBH、開空度、樹木密度、P:A比、森林面積、結合度などの環境条件を測定している。

肝心の果実資源量はデジタルカメラを利用して、まず林冠の写真を撮影し、その写真に含まれている果実が付いている枝の数を数える。さらに撮影した場所からいくつか枝を採集して、その枝に実っている果実数を数えることで、結実木全体の果実数の推定に用いている。この情報と個体数密度の情報を元にして、分断化林内の結実量を推定し、さらに景観レベルでの結実量の推定を行っている。

果実消費の観察はfocal-samplingとscan-samplingを組み合わせて行っている。Farwingらのケニアでの先行研究を参考にしている。36個体のべ85時間の観察を行っている。かなり少ないような気がしないでもないけど、1分間の観察時間に訪れる平均個体数が0.7とかで、のべ訪問回数が857回に及んでいるので、解析には十分な数を稼いでいる。こんなに鳥が来るとfocal-samplingはやれないだろう。

主な果実食鳥類はフォークランドツグミ、アカメタイランチョウ、チリーバトで、ツグミとタイランチョウは種子散布、ハトは種子食害を行っている。この論文では示されていないが、吐き戻された種子の発芽実験なども行っている。かなり大きなプロジェクトで行った研究の一部なのかな。
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