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長距離散布で種特異的なイモムシの食害を避ける [原著]

Norghauer et al. (2010) Long-distance dispersal helps germinating mahogany seedlings escape defoliation by a specialist caterpillar. Oecologia 162:405-412.

実生の距離・密度依存的な死亡による熱帯林樹木の高い種多様性を促進するメカニズムの一つとして、宿主特異的な病原菌や植食者があげられているが、それらの証拠を明確に示した研究は少ない。風散布樹木であるオオバマホガニーSwietenia macrophyllaと種特異的な植食昆虫Steniscadia poliophaeaを対象として、実験的に種子を播種して親木からの距離や密度をコントロールした形で、実生の死亡率などを調べている。

調査対象の幼虫は実生や稚樹の新葉を食べるが、成木の林冠では見られない。実生の生存率が親木から離れた場所で高いという先行研究があり、それを発展させる形の研究。風散布としては比較的重く0.35gの種子で、ほぼ100%が親木から半径100m以内に散布される。時折、強風が吹いたときなどに長距離散布~350mがある。7本の結実木を対象として、風下側に100mのラインを設定し、6箇所の2×2m調査区を設定している。各調査区内は1平方メートルあたり5種子の種子を播種している。

調査木によってかなりばらつきはあるものの、哺乳類による種子食害や既存の実生の密度などには傾向は見られない。一方、播種した種子から発芽した実生のダメージ量(食べられた葉の量)や回避率は距離に依存して、離れるほどダメージが少なく、食害の影響を回避している割合が高い。ただ、7個体の平均値として示すよりは、各個体の図を見たい。解析で個体差を考慮していないように見える部分が引っかかるのかもしれない。

ただ、これまでほとんど定量化されてこなかった幼虫の影響を実験的に示している点はすばらしい。わずか2-3週間のできごとなので、月2回程度の実生のモニタリングでは大部分を見逃していて、死亡要因不明とされた現象のかなりの割合を説明する要因となりうるのかも。
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