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森林と庭における移動式アンテナを使ったPITタグ付きナメクジの行動追跡 [原著]

Nyqvist et al. (2020) Tracking the movement of PIT-tagged terrestrial slugs (Arion vulgaris) in forest and garden habitats using mobile antennas. Journal of Molluscan Studies 86(1):79-82.
https://academic.oup.com/mollus/article-abstract/86/1/79/5756167

数年前にサンショウウオをPITタグで追跡した研究の話を聞いた時に大型のナメクジなら、同じような手法で個体追跡できるんじゃなかろうかと思っていたけど、まさにそんな研究がArion vulgarisを対象として行われていた。

不勉強で知らなかったのだけど、ナメクジにPITタグをつけた研究はこれが最初ではなく、2001年にすでにPITタグをつけて行動圏を調べた研究がActa Oecologicaに掲載されている。先行研究で使われたのと同じ種を対象として(先行研究は同定ミスで種名が異なって表記)、スウェーデンのカールスタードにおいて、庭と森林の二つの環境におけるArion vulgarisの行動追跡を行っている。

2018年9月17日と18日に64個体(庭54個体、森10個体)のArion vulgarisを捕獲し、麻酔をかけて12mmのPITタグを埋め込んでいる。このうち3個体はタグをつけている途中で死亡しているので、61個体(庭51個体、森10個体)を実験に利用している。9月19日に捕獲した環境で放逐し、追跡調査を行っている。ただし、このうち庭の3個体と森の1個体は放逐場所から移動しなかったので解析からはのぞいている。放逐個体は平均6.9gなので、ヤマナメクジなら楽勝サイズ。

2018年9月21日から10月11日の間に5回、日中と夜間の調査を行っている。PITタグと専用アンテナを使い、ナメクジを放逐した場所からだんだんと探索範囲を広げていくやり方で庭では800m2、森では1200mを探索している。一日の移動距離は0から3.5mで、平均0.7m。行動圏の中央値は庭で2.5m2、森林で20m2とかなりばらつく。森林では最大111m2。ただ、先行研究では最速2時間で7m移動したことも知られている種らしい。

うちの職場からはアクセスできない雑誌なので、リサゲ経由で著者に依頼して、Proofを送ってもらった。しばらくナメクジ論文が続きます。
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