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行動と腸内滞留時間から推定したオランウータンの種子散布カーネル [原著]

Tarszisz et al. (2018) An ecophysiologically informed model of seed dispersal by orangutans: linking animal movement with gut passage across time and space. Conservation Physiology 6: coy013

東南アジア熱帯において、最大の樹上性果実食動物であるにもかかわらず、オランウータンの種子散布者としての生態系機能の研究については、驚くほど情報が少ない。

まず、オーストラリアの飼育個体を利用して、種子がオランウータンの体内を通過して、糞として排泄されるまでの時間を測定している。ただし、本物の種子を利用しているのではなく、糞からよく見られる2-6mmサイズに対応したビーズを利用している。まあ、他の動物でもよく使われている手法。糞を回収して、その中のビーズをチェックして、種子の平均体内滞留時間を推定している。ビーズのサイズ依存性はなさそうで、2mmで平均70.6時間、4mmで72.5時間、6mmで86.2時間。

次は中央カリマンタンの泥炭湿地林に生息する野生個体(メス4頭、オス3頭)の追跡調査から、採食行動などを記録している。メスとオスで明確に行動パターンに違いが見られ、行動圏推定の手法としてLoCoHというやり方を利用している。あんまり見たことないけど、最近、使われている手法なのだろうか?

これらの情報を組み合わせて、種子散布カーネルを推定して、行動圏内にどの程度の確率で種子が散布されるのかを図示している。メスの場合は76時間以内にコアエリアに戻ってくる可能性が高いので、元の場所からそれほど離れた場所に種子が散布されることは多くはない。一方、オスの場合はメスよりも遠くにランダムに種子を散布する可能性が高そう。オランウータンを対象としているだけではなく、明確に種子散布パターンに雌雄差が出てくる可能性を指摘している点で貴重な論文。

多分、初めて読んだ雑誌。
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