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キホオテナガザルはDracontomelon daoの重要な種子散布者 [原著]

Hai et al. (2018) Gibbons (Nomascus gabriellae) provide key seed dispersal for the Pacific walnut (Dracontomelon dao), in Asia's lowland tropical forest. Acta Oecologica 88:71-79.

ベトナムのCat Tien国立公園でキホオテナガザルがよく利用しているウルシ科Dracontomelon daoの種子散布を調べた研究。2014年11月から2015年9月にかけて、3個体からなる家族を追跡して、果実消費や移動距離などを調べている。2015年にこの家族の行動圏内で結実していた10個体を対象としている。調査対象木から東西南北4方向に20×1mの調査区を設定し(樹冠を超える)、結実期間中、そこに落下した果実、種子、皮を二日ごとに計数している。果実や種子に残された食痕から利用した動物(未利用、テナガザル、マカク、リス)を推定している。結実量は落下した未利用果実と皮の数から推定している。

キホオテナガザルの種子散布距離は、前日に1個体しか利用しなかった場合は、その個体を母樹とし、複数個体を利用していた場合は、1個体しか利用しなかったときの体内滞留時間から推定している。さらに短期間の種子の運命を散布者(テナガザル、マカク、未利用果実)×結実個体からの距離(5m間隔)×種子持ち去り動物の排除の有無(ケージ)の処理を6個体の結実木周辺で行い、のべ1080種子を実験に用いている。種子の発芽は6個体の結実木周辺で結実終了後も約2週間間隔で観察を継続し、発芽の有無を調べている。さらに散布者間(テナガザル、マカク、未利用果実)の発芽率の違いを播種実験から確認している。最後にこれらの情報をまとめてSDEを計算している。

学位論文としてまとめられている中に果実消費の詳細な情報などもあるようなので、続きの論文を期待したい。
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