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木登りヤギさん反芻中に種子をまく [原著]

Delibes et al. (2017) Tree climbing goats disperse seeds during rumination
Frontiers in Ecology and the Environment 15:222-223.

モロッコで有名な木登りヤギが種子散布している可能性を指摘した論文。ヤギは険しい岩場を利用することはよく知られているが、木に登ることもある。モロッコでは、アカテツ科アルガンノキArgania spinosaに登って、その果実を利用する。1990年代からアルガンノキの種子からとれるアルガン油の市場価値が高まり、需要が増えてきた。アルガン油をとるには、まず果実から果肉を取り除き、核を破壊する必要がある。アルガンノキの果実をヤギに食べさせて、排泄された糞から核を取り出していると言われてきたが、実際は吐き戻しているらしい。モロッコのヤギ飼いたちも核は吐き戻していることを知っている。

有蹄類による被食散布は糞内容分析に注目したものが多いが、確かに吐き戻しでも種子散布しているし、カオヤイならホエジカやサンバーなどで普通に見られる現象。この研究では、ヤギに5種の果実(ヤシ科Chamaerops humilis、バラ科Crataegus monogyna、ニレ科Celtis australis、モクセイ科Olea europaea var. sylvestris、Olea europaea var. domestica、マメ科Ceratonia siliqua)を給餌して、吐き戻される種子の割合とその種子活性をTTC反応で検討している。というわけで、木登りヤギさんの話はイントロで使われているだけ。種子直径が10mmを超える大型種子2種(Chamaerops humilis、Olea europaea var. domestica)は30-45%の種子が吐き出され、その他は10%より少ない。

有蹄類による吐き戻し散布はそんなに見過ごされている種子散布システムだとは思わないけど、イントロの書き方とか上手なのだろうなあ。

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