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ヒヨドリにとって見ることは食うことである [原著]

Honda et al. (2015) Seeing is feeding for the frugivorous bird brown-eared bulbul (Microscelis amaurotis). International Journal of Zoology 2015, 869820.

果実食鳥類が視覚に依存して果実を探しているのは間違いない。この研究では、ヒヨドリの視覚から果実を見えなくすることで、果樹被害の軽減を試みている。ブドウ(スチューベン)は1.2mの高さの棒にぶら下げて、実験開始前に5日間、ブドウを提示して、実験条件に慣れさせている。採食台は140m離して、2箇所に設置している。

1月の15日間の調査で、コントロール、果序の半分が見える(上または下、止まりやすさ効果を考慮)、袋掛けの3処理を5回ずつランダムに提示して、それらを訪問する鳥類をデジタルビデオで観察して(8:30~16:00)、食害を定量化している。ただし、カラスが食害する可能性を排除するためにカラスよけを止まり木に上空に配置している。採餌行動はビデオ録画した映像から、つついた回数を計数している。訪問した鳥類はヒヨドリ、ツグミ、モズだが、つついたのはヒヨドリだけなので、ヒヨドリのみを解析対象としている。

訪問頻度は、コントロール>半分>袋掛けで1桁ずつくらい違う。半分見える果序では、ヒヨドリはほとんど透明部分をつついており、見えない部分をつついたのは1度きりで、上下は関係なさそう。記憶に依存しているなら、同じ場所で繰り返し実験しているのだから、袋掛した果序をつついても良さそうなものだけど、見えないと食べる気にならないらしい。

シンプルな実験で、クリアーな結果を示した研究なんだけど、実験条件整えるのに苦労したんではなかろうか。果樹被害に生態学的な知見を応用する研究は、うちの職場でもやれないかなあ。

西ジャワの熱帯山地における低木の種子散布に対する果実食鳥類の役割 [原著]

Partasasmita (2015) The role of frugivorous birds in the dispersal of shrubs in submontane zone of tropical forest, West Java, Indonesia. Nusantara Bioscience 7:144-148.

西ジャワのPanaruban周辺で放棄茶畑(標高880-1100m)を利用する果実食鳥類を対象として、糞内容分析と発芽実験を組み合わせた研究。カスミ網を利用して鳥類を捕獲し(ただし、調査努力量や調査時期などは書かれていない)、捕獲された鳥類は60分間、鳥袋内に放置し、その後、放鳥している。種子同定は、文献と調査地内で採集した果実と種子の参照標本の比較から行っている。果実と種子は外部形態も測定している。糞内容分析から得られた種子は3処理の発芽実験(糞から回収した種子、果肉を取り除いた種子、果肉付きの種子)を行っているが、サンプル数がそれぞれの果実種の処理あたり10個と書いてあるけど、繰り返しはとらなかったということか?

捕獲された鳥類は6種(オレンジハナドリDicaeum trigonostigma、コシジロヒヨドリPycnonotus aurigaster、アカボシヒヨドリPycnonotus bimaculatus、メグロヒヨドリPycnonotuis goiavier、ハイバラメジロZosterops palpebrosus、シュウダンムクドリScissirostrum dubium)で、糞から回収された種子は7種(Rubus chrysophyllus、Polygonum chinesis、Breynia microphylla、Melastoma affine、Clidemia hirta、Sambucus javanica、Lantana camara)。うーん、表の略名が学名や英名ではなく、現地名の略名を使っているので、わかりにくい。外来種のアメリカクサノボタンとヒチヘンゲが含まれている。

捕獲鳥類はオレンジハナドリ5羽(糞回収5羽)、コシジロヒヨドリ14羽(12)、アカボシヒヨドリ9羽(7)、メグロヒヨドリ34羽(28)、ハイバラメジロ128羽(107)、シュウダンムクドリ3羽(3)で、かなり多くの個体で糞を回収できている。ただ、その先の発芽実験の図はよくわからん。普通に考えたら、3処理のうち、糞から回収した種子の発芽率を示していそう。発芽実験は砂培地と綿培地の二つで行っていて、綿培地の方が多少、発芽率が高い。

東南アジア熱帯において、山地林の果実食データは多くはないし、外来種を散布しているデータが含まれている点で貴重なんだけど、調査手法が情報不足なので、実験設定が不明なのと英文校閲されていないので解読が難しい。

シーサンパンナの果実食鳥類が種子の体内滞留時間と発芽に及ぼす影響 [原著]

Shi et al. (2015) Effects of frugivorous birds on seed retention time and germination in Xishuangbanna, southwest China. Zoological Research 36:241-247.

飼育個体を利用して、種子の体内滞留時間SRT、発芽率、発芽速度について調べた研究。シーサンパンナ植物園で植物7種(Litsea glutinosa、Syzygium hainanense、Polyalthia suberosa、Microcos paniculata、Dendrophthoe pentandra、Ardisia suqamulosa、Ophiopogon bodinieri)を利用する主な果実食鳥類6種(コウラウンPycnonotus jocosus、コシジロヒヨドリPycnonotus aurigaster、エボシヒヨドリPycnonotus melanicterus、アオノドゴシキドリMegalaima asiatica、アオハナドリDicaeum concolor、ハッカチョウAcridotheres cristatellus)を対象としている。ただし、タイワンジャノヒゲOphiopogon bodinieriは果実サイズが種内で異なるため、果実の大小を区別して実験に利用している。また、アオハナドリは果実を食べなかったため、SRTからは除外している。

2012年7月から2013年7月にかけて朝(7:00-8:30)と夕(16:00-17:30)に調査対象7種を観察し、果実を利用する優占種を確定している。飼育個体を利用した給餌実験は計33個体(コウラウン8個体、コシジロヒヨドリ6個体、エボシヒヨドリ8個体、アオノドゴシキドリ5個体、ハッカチョウ6個体)を対象として、朝8時に30個の果実を提示している。食べ始めてから10分後に提示した果実を取り除き、5分間隔でトレー上に落ちた糞を確認している。

発芽実験用の種子は飼育個体に20個の果実を提示している。各種5個体を対象として、実験を行っているが、ハッカチョウは体調不良だったので、対象とした植物は3種のみ。また、野外でアオハナドリの糞からDendrephthoe pentandraの種子を回収して、発芽実験に利用している。発芽実験にはペトリ皿を利用し(27度、L14D10)、発芽した種子は順次取り除き、2ヶ月間新たな発芽が見られなかった時点で実験を終了している。

各果実種27時間の観察(のべ216時間)から、11種1021個体の訪問を記録している。小型のPolyalthiaにもコウラウンなどがかなりの頻度で訪問している。やっぱり小型鳥類も食べるよね。ただし、タイワンジャノヒゲは観察期間中に訪問は記録されていない。まあ、林床草本で直接観察は難しいだろう。SRTを記録できた種では、同一の果実種であればあまり大きな違いは見られない。ちょっと面白いのは発芽率のデータで、Dendrephthoe pentandraではアオハナドリの発芽率が50%を超えるのに対して、その他は10%以下。アオハナドリだけ野外で採集した糞から回収した種子の発芽率だけど、ヤドリギとの相互作用の一端を示しているのかもしれない。

確かにSRTを評価した先行研究では、複数の動物と植物を一度に解析対象にしていることは少ないので、そういったデータをアジアからも提示している点で貴重。

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