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カモ類による種子散布:幅広い植物種における見過ごされた散布経路 [原著]

Soons et al. (2016) Seed dispersal by dabbling ducks: an overlooked dispersal pathway for a broad spectrum of plant species. Journal of Ecology 104: 443-455.

水鳥による種子散布のなかでも、特に研究が進んでいるマガモ属7種(オナガガモ、ハシビロガモ、コガモ、ヒドリガモ、マガモ、シマアジ、オカヨシガモ)の種子散布に関する文献調査から、これらのカモ類が水草だけではなく、多様な分類群の植物の種子散布を行っている可能性を指摘している。特に本来、体内通過型の種子散布とは考えられてこなかった植物種の種子が含まれている点に注目している。

調査対象は西ユーラシアで、まずは腸内容物分析から種子散布している可能性のある食物リストを作成している。次にそれらの植物の機能形質を文献やデータベース(PLANTATTとLEDA)を利用して収集している。さらに特にサンプル数が多いフランスとオランダのデータについては、サンプリングが十分に行われているかをrarefaction curveで評価している。

71報の研究で報告された152事例8335個体分のデータに基づき、少なくとも57科189属445種の植物が利用されている。イネ科73種とカヤツリグサ科57種、ヒユ科34種、タデ科23種、バラ科20種、キク科18種、マメ科17種が上位で、これまでにカモ類が散布するとは思われていない分類群も含まれている。属レベルではCarexが36種でもっとも多い。液果も16属35種(Cotoneaster、Crataegus、Elaeagnus、Empetrum、Fragaria、Prunus、Pyrus、Rapistrum、Rosa、Rubus、Sambucus、Solanum、Sorbus、Vaccinium、Viburnum、Vitis)が含まれている。落ちている果実を食べているんだろうか?面白いのは液果以外のデータで、277種はこれまでに体内通過型の種子散布とは知られていない植物種。特にCarexのほとんどは体内通過型の種子散布の記録がない。

もちろん、腸内容物に種子が含まれていたからといって、有効な種子散布者であるとは限らないし、カモ類が狙ってこういった植物の果実や種子を食べているとは考えにくい。しかし、一見すると被食散布に適応しているとは思えないような植物であっても、こういった形で長距離散布される可能性を提示している点で面白い。

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