SSブログ

タヌキのため糞場から発見された種子:種子散布の可能性 [原著]

Sakamoto & Takatsuki (2015) Seeds recovered from the droppings at latrines of the raccoon dog (Nyctereutes procyonoides viverrinus): The possibility of seed dispersal. Zoological Science 32:157-162.

タヌキのため糞場を利用したタヌキの果実食の確認とマーカーを利用した潜在的な種子散布距離の推定を行った研究。近年、ヨーロッパを中心に中・小型の肉食動物による種子散布の研究は飛躍的に進んできた。日本でもタヌキの食性や生息場所選択などの研究が進んで、種子散布に関するデータも公表されつつある。

調査地は東京都で、2009年6月から2010年5月の1年間にわたり、毎月、10個の糞をため糞から回収している(N=120個)。ただし、2009年6月と8月は糞が見つからなかったので、2010年に追加で採集している。調査区内で計22か所(林内:4か所、草原:18か所)のため糞を発見し、新しい糞に含まれている種子を確認している。種子散布距離はbait-marking methodを利用して、色が異なるラベル(6 x 8 mm)を魚肉ソーセージに埋め込んで、採餌場所からため糞場所までの距離を推定している。

糞内容分析から、96.7%の糞から計50種32,473個の種子が見つかっている。27種は種レベル、12種が属レベル、11種が科レベルまで同定できている。ヒサカキ、キイチゴ類、イヌホウズキ、コウゾ、ヤブランなどの種子が見つかっている。タヌキって、ヤブランの果実、そんなに食べるのね。この他にイネ科草本の種子が9種650個、その他の草本13種564個、マメ科5種68個が見つかっている。まあ、見つかった種子の大部分は液果。

マークの回収率は5.4%で、移動距離は給餌場所とため糞場所の位置から推定される期待値よりも距離が短い50m以下に集中して出現している。しかし、200mや350mにも出現しており、ある程度の距離は運ばれている。草原のマーカーは99.4%が草原で回収されており、森で回収されたのは1つのみ。一方、森のマーカーは64.9%が森、35%.1が草原で回収されているので、一定の割合で草原に森の植物が運ばれていそう。ただ、これは給餌場所と回収するため糞場所のそもそもの位置関係やサンプリング数も影響する。

カキやイチョウも入っているし、タヌキによる種子散布距離を推定した論文として、イチョウの論文をまとめるときに引用できそう。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。