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定量的な種子散布ネットワークを構築するための方法比較:動物を観察するか、糞を集めるか [原著]

Schlautmann et al. (2021) Observing frugivores or collecting scats: a method comparison to construct quantitative seed dispersal networks. Oikos 130:1359-1369.
https://doi.org/10.1111/oik.08175

種子散布分野でもネットワーク解析はよく使われる手法として定着してきたが、その元データを収集する手法はさまざまである。本研究では、10種の植物を観察して記録した2189回の果実食動物の訪問データに基づいた種子散布ネットワーク(seed removal network)とDNAバーコーディングを利用した3094の果実食動物の糞や吐き戻しの分析に基づいた種子散布ネットワーク(seed deposition network)を比較している。日中に結実個体を訪問して、果実を採食する鳥類では前者、夜間に結実個体を訪問して、直接観察は難しいけど、糞は見つけやすい哺乳類では後者の手法が有効になると考えられるので、両方の手法を組み合わせることが必要だろうけど、それを豊富なデータに基づいて検証している。

調査地はポーランドとベラルーシの国境にまたがるビャウォヴィエジャの森。先行研究で、11か所の調査地が設置されており、2011年から2012年に10種の結実個体での果実の持ち去りが観察されている。一方、DNAバーコーディングによる糞内容分析では2016年から2018年にかけて、トランセクト沿いで、上記の10種の近くで糞を回収している。果実持ち去りと糞・吐き戻し分析のデータは調査地ごとにプールして、前者で77個、後者で87個のplant-siteの組み合わせをサンプリングしている。ただし、調査地によっては結実していない植物もいるので、どちらかのネットワークにシカ出現していないものは除去した結果、69個のplant-siteの組み合わせを対象としている。

果実持ち去りネットワークでは、1800時間の観察で25種の果実食動物が26977個の種子を2189回の訪問で持ち去っている。糞・吐き戻し分析では、20種の果実食動物が9376個の種子を3094個の糞・吐き戻しとして散布していた。両方のネットワークで共通していたのは11種で、残りのどちらかでしか記録されていない種のほとんどは量的な貢献は1%程度だった。優占したのは鳥類5種で、前者で97%、後者で77%の種子に該当した。一方、マツテンは前者では1%未満だったが、後者では22%にもなった。まあ、テンが結実個体で果実消費するのを観察するのは難しいだろうけど、糞は目立つ場所にすることが多いだろうから、よく拾うことはできるんだろう。

基本的には、量的な貢献度が高い動物については、どちらの手法でも記録できているけど、例外がマツテンになる。ただ、両方のネットワークは全体としては類似していたが、個々の特性については、相関は見られず、果実資源量の影響が大きい様子。まあ、利用可能な資源から何を食べることができるのかがある程度決まってしまうからなんだろう。ただし、考察でも述べられているようにこの研究はカメラトラップを使っていないので、結実個体での哺乳類の果実持ち去りを過小した可能性があるが、DNAバーコーディングで、糞や吐き戻しの種同定をしっかり行うことで、追加情報を得ることができるので、今後はますます広く使われるようになりそう。
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