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樹上カメラトラップ:大規模に樹上の果実と果実食動物の相互作用を観察するツール [原著]

Zhu et al. (2021) Arboreal camera trapping: a reliable tool to monitor plant-frugivore interactions in the trees on large scales. Remote Sensing in Ecology and Conservation (in press).
https://doi.org/10.1002/rse2.232

樹上(最高8mの高さまで)にカメラトラップを設置して果実と果実食動物の相互作用系に注目した研究。中国の千島湖ダム湖)の22か所の陸橋島において、液果をつける18種(Symplocos stellaris、Smilax china、Symplocos paniculata、Phytolacca americana、Aralia chinensis、Ilex chinensis、Vaccinium carlesii、Rubus lambertianus、Eurya muricata、Vaccinium mandarinorum、Lindera glauca、Raphiolepis indica、Ilex rotunda、Vaccinium bracteatum、Diospyros kaki、Rhamnus crenata、Photinia parvifolia、Rhus chinensis)を対象として、のべ318か所にカメラを設置して、果実を利用する動物を記録している。カメラトラップから得られた撮影画像から、果実食の有無を5段階評価している。さらに果実食を記録するために必要な調査努力量についてもヤンバルミミズバイSymplocos stellarisとヒサカキの仲間Eurya muricataの2樹種を対象として検討している。

調査期間は2019年6月から12月で、島ごとに調査路を設定し、月2回の頻度で調査路沿いの結実個体を探して、カメラを設置している。同種の結実個体がたくさんある場合は、結実数が多い個体を選択し、同種個体に設置する場合は20m以上離した場所で設置することで、過大評価しないようにしている。自動撮影カメラはLtl Acorn6210で、果実から2m離れた位置に設置している。センサー感度はHighかNormalに設定しており、感知時に3枚の静止画と10秒の動画を撮影する設定。同定用の写真を静止画でとらえて、果実食の有無を動画で確認するのに適した設定なのか?動画10秒だと果実を食べた証拠は得られても、訪問あたりの持ち去り数を評価することは難しい。果実食の有無は5段階評価(5:カメラをおいた島で採食した、4:カメラをおいた以外の島で採食した、3:どの島でも採食しなかったが、近縁種(同じ科または属)が採食した、2:採食記録はなかったが、他の地域の文献情報に記録があった、1:カメラでも文献情報にも記録なし)して、5と4の情報に基づいた解析を行っている。

12400カメラ日の映像(1490566個の画像と動画)に基づき4399イベントで275の果実と鳥類の相互作用を記録している。低木やツルのデータが含まれているので、日本で行っている研究と比較できそう。ただ、詳細な相互作用データは本論文では扱っておらず、あくまで調査手法としてどのくらい使えそうかを検討している。5台のカメラを30日間設置したSymplocos stellarisと53日間設置したEurya muricataでは、前者が7種、後者が11種の果実食鳥類を記録している。種数累積曲線はいずれも20日間ほどで飽和するが、前者では10日間、後者では21日間の調査ですべての種を記録できている。

樹上に自動撮影カメラを設置した研究は増えつつあるけど、まだまだ報告数としては少ないし、本研究のように群集レベルを対象とした研究も限られている。イントロで、樹上にカメラトラップを応用した先行研究がまとめられているので、卒論生に読んでもらうにはちょうどよさそう。Zhu, C., Li, W., Wang, D., Ding, P. & Si, X. (2021) Plant-frugivore interactions revealed by arboreal camera trapping. Frontiers in Ecology and the Environment 19: 149-151も併せて読むとよさそう。
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