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アジアの森林性サイチョウ類はどのくらいの距離を種子散布するのか? [原著]

Naniwadekar et al. (2019) How far do Asian forest hornbills disperse seeds? Acta Oecologica 101:103482

東南アジアを代表する大型のサイチョウ類であるオオサイチョウとシワコブサイチョウの2種を対象として、結実木への訪問パターン、GPSによる個体追跡データ、種子の体内滞留時間を組み合わせて、種子散布距離を推定した研究。サンプル数はオオサイチョウ5羽、シワコブサイチョウ1羽で少ないものの、GPSテレメトリーを利用して、15分間隔の移動データを得ている。個体追跡データは1日30点以上のデータが得られたもののみを解析に利用している。追跡データはmovebankに登録されている。種子の体内滞留時間は2017年のクチンのサイチョウ学会で発表されており、特集号としてSarawak Museum Journalに掲載予定。元データはDRYADですでに公開されている。オオサイチョウとシワコブサイチョウの種子の体内滞留時間に差がないことを前提に両種をまとめて5種の果実(Aglaia spectabilis, Beilschmiedia assamica, Livistona jenkinsiana, Polyalthia simiarum, Syzygium cumini)について解析している。

これらのデータから、オオサイチョウの繁殖雄が営巣木の周辺とそれ以外の場所に種子を散布する割合、オオサイチョウの繁殖期と非繁殖期における種子散布距離の個体差、繁殖期のオオサイチョウとシワコブサイチョウの種子散布距離の種間差、の3点に注目した解析を行っている。まず結実木への訪問パターンは、繁殖期、非繁殖期ともに一日を通して、訪問が見られるが、時間帯はばらつきがあり早朝に多い。ただし、繁殖期と非繁殖期のパターンは変わらないので、早朝に高い活動性が見られるのは年間を通して同じ。まあ、起きたら朝ごはんなんだろうな。

GPSの位置データは、19-80日の追跡で、位置情報が1118から4707点。さすがに点数が多い。繁殖期のオオサイチョウの種子散布距離の中央値は294m、非繁殖期が254mでほとんど変わらないが、繁殖期のシワコブサイチョウは1,354mでかなり長い。最大値は繁殖期のオオサイチョウで2,502m、非繁殖期が12,860m、繁殖期のシワコブサイチョウが10,828m。繁殖期のオオサイチョウとシワコブサイチョウの違いはイチジクへの依存度だろうか。繁殖期に営巣木の近くで記録されたオオサイチョウは7.4%、シワコブサイチョウは1.7%で、ほとんどの種子はそれ以外の場所に散布されたと推定している。

GPSで追跡できている個体数は少ないものの、サイチョウ類の種子散布にも個体差がかなりありそうなデータを提示している貴重な研究。
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