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大型の果実食動物が重要:ネットワークと種子散布者の有効性に基づいた洞察 [原著]

Naniwadekar et al. (2019) Large frugivores matter: Insights from network and seed dispersal effectiveness approaches. Journal of Animal Ecology 88: 1250-1262.

インド北東部でサイチョウ類の種子散布の研究を続けているグループからの総まとめ的な論文で、さまざまな果実形質を持つ植物とそれらを利用する果実食鳥類の関係をネットワーク分析と結実木での果実消費行動に基づき有効性を検討した研究。

調査地はアルナチャールプラデッシュのPakke Tiger Reserveで、2015年4月から6月は大型種子をもつ5種(Polyalthia simiarum, Dysoxylum gotadhora, Aglaia spectabilis, Chisocheton cumingianus Horsfieldia kingii)を対象として66回の観察を行っている。2016年10月から2018年2月にかけては、上記の5種を含む46種を対象にして、269回の観察を行っている。21科46種の鳥散布植物184個体を対象とした、のべ335回2065時間11分の観察に基づく大規模データ。

果実形質は、果実サイズは30個の熟した果実を測定したものと、データベースから情報を得ており、Sが5mm未満、Mが5-15mm、Lが15mmより大きいものとしている。果実食鳥類の口幅サイズはイギリスとボンベイの博物館標本を利用している。果実食鳥類のサイズ区分は、先行研究のVidal (2013)にしたがい、0.1kgより重たいものをLargeとしている。ゴシキドリ類(1.97–2.77 cm)、ヒヨドリ類(0.88–1.37 cm)、アオバト類(1.09–1.41 cm)、ミカドバト類(1.83–1.84 cm)、サイチョウ類(4.29–5.73 cm)の口幅サイズも掲載されている。ミカドバトが少し小さすぎる気がするけどな…。観察データが多いAglaia spectabilis, Chisocheton cumingianus, Dysoxylum gotadhora, Polyalthia simiarumの4種については、x軸に訪問頻度と滞在あたりの持ち去り果実数、y軸に呑み込んだ果実の割合を使って、SDE landscapeを作成している。

48種14,756個体の訪問を記録して、43種の植物との間に432の相互作用を記録している。果実食鳥類がまったく記録されたなかったのがクスノキ科3種(Litsea sp. 1, Actinodaphne obovata, Beilschmiedia assamica)、一方、記録種数が多いのは、着生イチジク3種(Ficus drupacea 25種, F. geniculata 24種、F. altissima 20種)。サイチョウ類は3種で12種が利用されほぼ同じパターン(オオサイチョウ11種、シワコブサイチョウ12種、キタカササギサイチョウ11種)。果実食鳥類のグループごとに示された利用する果実サイズと果実の丸のみ率の散布図は明確に口幅制限を示している。サイチョウ類を除いて、果実サイズが大きくなると呑み込み率が低下する。SDE landscapeはサイチョウ類はほとんど丸呑みするので、質の要素はいずれも高いが、量の要素はサイズ依存で、オオサイチョウ>シワコブサイチョウ>キタカササギサイチョウというデータになっている。これ、同じ解析してみようかな。

果実食哺乳類は含まれていないけど、大小さまざまな鳥類と果実を群集レベルで観察したデータにもとづいた貴重な研究。カオヤイでもこのくらいの精度で観察データを収集してみたかった。
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