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土中の花粉から雌雄異株植物の性別を判別する [原著]

Sugiyama et al. (2017) The use of soil pollen to determine the sex of overhead individuals of a temperate dioecious shrub. American Journal of Botany 104:632-638.

雌雄異株の植物個体の性別を決定するには、開花期に花を観察するのが一般的。開花時期が限定されている植物もいれば、観察時に開花しない個体もいるため、対象個体の性別を決めるのは意外と面倒。この研究では、アオキを対象として、1)虫媒花であるアオキの花粉が土中に存在しているのか、2)土中に含まれるアオキの花粉量はメス個体よりもオス個体で多いのか、の2点について検討している。

調査地は茨城県の牛久自然観察の森で、林床のアオキが調査対象。アオキは虫媒花をつけ、風媒の植物ほどは花粉を生産しないが、それでも雄花をつける雄個体の下には、メス個体よりも多数の花粉が落下するとの仮定は不思議ではない。2015年12月にメス10個体(果実から判定)とオス10個体(2016年3月に再訪して雄花を確認)の直下の土壌(O層とA層の2箇所×3方向×10個体×2性別)を計120サンプル採取している。O層は2-3年前の花粉の集積、A層は10年前までくらいの花粉の集積を反映していると考えている。これらのサンプルに含まれる花粉数を計数して、比較している。

大量のスギなどの風媒植物の花粉に混じって、O層とA層の両方から風媒植物と比べると数は少ないものの、アオキの花粉が見つかっている。また、どちらの層でもメスよりもオスの下で花粉数が多い。この花粉数の情報から、ロジスティック回帰を使って、雌雄判別してみると比較的高い値で正しく予測できている。オス個体の開花数はいずれの層の花粉量ともに相関が見られない。しかし、オスの樹高とはO層では正の相関があり、A層では相関が見られない。1回の開花数では、明確ではないけど、大型個体の直下だと貯まる花粉が多いのか。

分子情報を使ったりすればより正確に性別を決めることができる場合もあるけど、この研究で提示された方法はシンプルで簡便なので、熱帯とかでも使いやすそうな点が良い。というか、こんな研究していたんですね。
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