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温帯林における鳥散布型樹種ミズキの種子散布パターンの季節・年変動 [原著]

Yamazaki et al. (2016) Temporal variations in seed dispersal patterns of a bird-dispersed tree, Swida controversa (Cornaceae), in a temperate forest. Ecological Research 31: 165-176.

種子散布関係では、日本で最も充実したデータが集められている樹木の一つであるミズキは夏から秋にかけて比較的長い期間、果実が結実し、さまざまな果実食動物によって利用される。小川学術参考林で豊作年の2009年と凶作年の2010年に結実量と果実食鳥類の時間的な変化にともなうミズキの種子散布パターンの変化を果実持ち去り観察、種子トラップからの種子の回収、遺伝マーカーを利用した親子判定と種子散布距離から評価している。

双眼鏡による直接観察で、2009年に9個体128時間、2010年に6個体66時間、計194時間の観察を行っている。結実期間中、月2回の頻度で、双眼鏡で15秒間に果序数を計数する作業を3回行い、GBHから推定した樹冠サイズを利用した換算式に当てはめて、結実量を推定している。さらに結実木下に種子トラップを設置し、鳥が散布した種子の母樹を遺伝マーカーで推定している。

2009年は14種209訪問(1.63個体/h、0.82果実/h)、2010年は12種52訪問(0.79個体/h、0.44果実/h)。豊作年の方が多様な鳥が訪問し、より多くの種子が持ち去られている。両年で共通していたのは6種(メジロ、ヒヨドリ、クロツグミなど)で、鳥種によって、訪問頻度や訪問あたりの消費果実数は大きく異なる。同じ年でも季節によって果実利用する鳥類が異なるらしい。

遺伝マーカーを利用した解析から、鳥類は母樹下に散布することも多いが、20m以上散布した種子が16%、100 m以上が4%、プロット外からの移入が24%あった。また、結実ピーク時は、母樹下へ散布された種子が減少し、プロット外からの移入種子が増加していた。散布距離の季節変動は年によって大きく変わらず、9月ごろに長くなる。また散布距離は豊作年の方が凶作年よりも長い傾向があった。

この果実食鳥類の種構成の季節変動と種子散布距離の変化はマムシグサのデータを考察する際にも参考になりそう。
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