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シーサンパンナの果実食鳥類が種子の体内滞留時間と発芽に及ぼす影響 [原著]

Shi et al. (2015) Effects of frugivorous birds on seed retention time and germination in Xishuangbanna, southwest China. Zoological Research 36:241-247.

飼育個体を利用して、種子の体内滞留時間SRT、発芽率、発芽速度について調べた研究。シーサンパンナ植物園で植物7種(Litsea glutinosa、Syzygium hainanense、Polyalthia suberosa、Microcos paniculata、Dendrophthoe pentandra、Ardisia suqamulosa、Ophiopogon bodinieri)を利用する主な果実食鳥類6種(コウラウンPycnonotus jocosus、コシジロヒヨドリPycnonotus aurigaster、エボシヒヨドリPycnonotus melanicterus、アオノドゴシキドリMegalaima asiatica、アオハナドリDicaeum concolor、ハッカチョウAcridotheres cristatellus)を対象としている。ただし、タイワンジャノヒゲOphiopogon bodinieriは果実サイズが種内で異なるため、果実の大小を区別して実験に利用している。また、アオハナドリは果実を食べなかったため、SRTからは除外している。

2012年7月から2013年7月にかけて朝(7:00-8:30)と夕(16:00-17:30)に調査対象7種を観察し、果実を利用する優占種を確定している。飼育個体を利用した給餌実験は計33個体(コウラウン8個体、コシジロヒヨドリ6個体、エボシヒヨドリ8個体、アオノドゴシキドリ5個体、ハッカチョウ6個体)を対象として、朝8時に30個の果実を提示している。食べ始めてから10分後に提示した果実を取り除き、5分間隔でトレー上に落ちた糞を確認している。

発芽実験用の種子は飼育個体に20個の果実を提示している。各種5個体を対象として、実験を行っているが、ハッカチョウは体調不良だったので、対象とした植物は3種のみ。また、野外でアオハナドリの糞からDendrephthoe pentandraの種子を回収して、発芽実験に利用している。発芽実験にはペトリ皿を利用し(27度、L14D10)、発芽した種子は順次取り除き、2ヶ月間新たな発芽が見られなかった時点で実験を終了している。

各果実種27時間の観察(のべ216時間)から、11種1021個体の訪問を記録している。小型のPolyalthiaにもコウラウンなどがかなりの頻度で訪問している。やっぱり小型鳥類も食べるよね。ただし、タイワンジャノヒゲは観察期間中に訪問は記録されていない。まあ、林床草本で直接観察は難しいだろう。SRTを記録できた種では、同一の果実種であればあまり大きな違いは見られない。ちょっと面白いのは発芽率のデータで、Dendrephthoe pentandraではアオハナドリの発芽率が50%を超えるのに対して、その他は10%以下。アオハナドリだけ野外で採集した糞から回収した種子の発芽率だけど、ヤドリギとの相互作用の一端を示しているのかもしれない。

確かにSRTを評価した先行研究では、複数の動物と植物を一度に解析対象にしていることは少ないので、そういったデータをアジアからも提示している点で貴重。
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