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ホンドテンはサルナシが好き:林縁ツル植物の指向性散布者として [原著]

Yasumoto & Takatsuki (2015) The Japanese marten favors Actinidia arguta, a forest edge liane as a directed seed disperser. Zoological Science 32: 255-259.

ホンドテンがサルナシの指向性散布にかかわっている可能性を指摘した論文。サルナシは果実形質としては、いわゆる哺乳類散布に該当する果実。ホンドテンがサルナシの正当な種子散布者であるか、ホンドテンは林内よりも林縁でよく糞をするのか、サルナシは林内よりも林縁でよく成長するのかを検討している。ただし、サルナシベースでデータを集めているわけではなく、ホンドテン側からの研究で、サルナシについては、別の調査地(長野県アファンの森)で調べている点が弱い。

東京都あきる野市で、8.4kmの調査路を設定し、2012年12月から2013年11月にかけて、ホンドテンの糞をサンプリングしている。糞内容から食性を、葉、果実、種子、昆虫、甲殻類、鳥・哺乳類、不明としている。ただしキイチゴ類はRubus spp.でまとめている。分析した糞は冬に20個、春に25個、夏に24個、秋に20個の計89個。糞に種子が含まれていた植物の生息環境を林内、林縁、草原、植栽の4つに分類している。さらにベルトトランセクトを設定して、林内と林縁の糞密度を比較している。

ホンドテンの糞からは、シーズンを通して果実が出現している。ちょっと意外なのは春にかなり葉が含まれているところ。葉としか書いていないので、詳細は不明だが、新芽を食べているのだろうか?ジャコウネコみたいにイネ科草本の固い葉が出てきているのなら面白そう。10種の種子が発見され、キイチゴ類とサルナシが大部分を占めていた。生息環境は林内3種、林縁5種、草原1種、植栽1種だが、調査地で林縁に該当するのは1%に過ぎない。林内と林縁では、林縁で糞密度が高いことから、ホンドテンは林縁を選んで糞をしているらしい。

サルナシは林内ではなく、林縁で高い密度で見られ、ホンドテンは積極的にサルナシを食べにやってきているようす。サルナシ、キイチゴ類、ブドウ類などはいずれもツル植物で、ホンドテンの高い木登り技術が反映されているのではないだろうか。

ホンドテンはドクウツギも散布するようだし(花井 1978 石川県白山自然保護センター研究報告4:83-92;上馬ほか 2005 石川県白山自然保護センター研究報告32:31-36;足立ほか 2016 哺乳類科学56:17-25)、集中的に散布される影響がどの程度なのかを検討する必要はあるけど、意外な植物の種子散布に実は結構、貢献しているのかも?
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