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分断化した景観におけるナキサイチョウの種子散布パターン [原著]

Lenz et al. (2011) Seed-dispersal distributions by trumpeter hornbills in fragmented landscapes. Proceeding of the Royal Society B (in press). DOI:10.1098/rspb.2010.2383

FSD2010でポスター発表していたLenzさんの研究内容が論文化されたもの。南アフリカの森林が分断化している景観において、ナキサイチョウにGPSロガーを装着して、15分ごとの詳細な行動パターンを記録している。2年間の調査でオス10羽、メス8羽を捕獲し、そのうちオスのみにロガーを装着している。メスは営巣する可能性があるので、ロガーを装着しなかったらしい。

ドイツ国内で飼育されている個体に果実を与えて種子の体内滞留時間を測定して、それらのデータを組み合わせることで種子散布距離の推定を行なっている。野生の果実は手に入らないので、ミニトマト、ブドウ、ミカン、ライチなどを与えている。大型のライチはリュウガンと同じような果実・種子サイズなので、参考データとしては利用できる情報。

ロガーの寿命は3週間程度で行動圏の調査には短いが、短期間の種子散布距離を推定するには十分な長さ。ロガーから2kmまで近づくことができればロガーからデータをダウンロードできるが、道路を車で移動できる環境ならではの仕事。ただし、繁殖期のオスのサイチョウにつければ、営巣木に戻ってくるし、ねぐらの近くでデータをダウンロードすることができるかもしれない。GPSロガーのほうが普通の衛星追跡よりも圧倒的に値段が安いという話をしていたので、タイのサイチョウでも利用する価値はありそう。

解析に用いたデータは少なくとも一日に30点以上の位置情報が得られた個体で、平均17日間のデータを利用している。1個体あたりの位置情報は平均676地点とこれまでの先行研究と比較すると圧倒的に多い。位置情報の測定誤差が10m以下。体内滞留時間は平均57分、最長155分とあまり長くはない。最後の種子が出てから2時間半以上、種子がでなかった場合に観察をやめているので、そんなに悪いデータではない。

景観によって種子散布距離は大きくかわり、森林内なら86mにピークがあるが、分断化された森林がモザイク状に分布する農地だと18mと512mのピークがある。最大種子散布距離は14.5kmに及び、これまでにサイチョウ類で記録されているなかでもっとも長い。これは先行研究がラジオトラッキング法を利用した追跡調査で、調査能力の限界も示しているのだろう。また個体による種子散布距離の違いにも着目しており、ほとんどを同じ森林内で過ごした個体は当然ながら、種子散布距離は比較的短いことを考察で述べている。これだけ詳細な行動データが得られたのであれば、個体ベースの話にも持ち込みやすいのだろう。
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