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中位捕食者の繁栄 [総説]

Prugh et al. (2009) The rise of the mesopredator. BioScience 59:779-791.
人間活動の影響により上位捕食者が減少し、それにともなって中位捕食者の数が増加するmesopredator releaseと呼ばれる現象についてまとめた総説。こう行った枠組みを整理するときに大切なのが、言葉の定義。この論文では、トップの捕食者の密度や分布の現象にともない、中位捕食者の密度や分布が拡大し、行動が変化する現象として定義している。詳細は2010年4月に出たTrophic Cascades: Predators, Prey, and the Changing Dynamics of Natureという本に書かれている。

この定義の場合、トップと底辺以外はすべて中位捕食者になる可能性がある。しかし、種で定義するとそれより上位の種がいるかどうかで、上位捕食者だったり、中位捕食者だったりしてしまう。体重などで定義される場合もあるが、それも恣意的な指標にはかわりないので、この論文では食物網の中での位置付けとして定義している。

南極大陸以外のすべての大陸からmesopredator releaseが報告されており、鳥類、ウミガメ類、トカゲ類、ネズミ類、有袋類、ウサギ類、魚類、貝類、昆虫類、有蹄類などさまざまな分類群から報告されている。特に近年、着目されているのは侵入種との関係で、世界の様々な地域で問題視されている。

ただ具体例として取り上げられているのがヨーロッパやアメリカの研究で、イマイチ実感がわきにくい。コヨーテって、てっきり上位捕食者だと思ったけど、たしかにオオカミがいると、そちらのほうが上か。上位捕食者が減少したことで、中位捕食者の増加による被害は上位捕食者がもたらす被害とトントンかもしれないが、個体数が増加した中位捕食者をコントロールするのは難しい。

意外と見過ごされがちだけど重要かもしれないのは上位捕食者を忌避する行動などの間接的な影響。これも生態系サービスの一つだけど、定量化するのが難しい。このへんの研究はイエローストーンで行われたオオカミの再導入実験が圧倒的に面白いデータを提示している。かと言って、ハンター自体が絶滅危惧種である日本において増えすぎたシカやイノシシの対策として大陸産のオオカミを導入するのは難しいのではないかな。
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