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植物とトカゲの相互作用における種子散布の有効性と散布者喪失の結末 [原著]

Rodrigues-Perez & Traveset (2010) Seed dispersal effectiveness in a plant-lizard interaction and its consequences for plant regeneration after dispeser loss. Plant Ecology 207:269-280

固有種のトカゲが散布しているジンチョウゲ科の固有種Daphne rodrigueziiの種子散布の研究で、Travesetさんが調査を続けているスペインの島嶼部の話。面積の広い島では2000年ほど前にDaphne rodrigueziiの唯一の散布者であるトカゲが絶滅しているが、周辺の小島にはまだ生き残っている非常に単純なシステム。年間降水量は500mm程度でかなり乾燥した島なのだろう。

果実持ち去りに果実や種子のサイズが与える影響、トカゲの腸内通過、種子サイズ、散布地など微環境などの条件が実生の出現と生存に与える影響の評価、トカゲの有無で実生の生育が異なるかどうかを調べている。2000年に予備調査を行ない、2003年と2004年に主な実験を行っている。トカゲの効果についてはケージを用いた除去実験を行ない、既にいくつも論文が掲載されているシステムだけど、こんなデータも収集していたらしい。

質の評価として、トカゲが散布する可能性が高い低木の下で発芽実験と実生の生存の追跡調査を行っている点がよい。普通は実験的にこういったデータを収集するのは難しい。優れた研究システムとはいえ、基礎情報が集積されているからこそできる研究ですな。最近は統計処理の結果はweb上のAppendixとして公開する雑誌が多いけど、これは表としてまとめてあるので読みやすい。

トカゲの腸内を通過するかどうかは実生の出現や生存には関係なく、一番効いてくるのは、低木の下に運ばれているかどうかの微環境の効果。同種個体よりは、別種個体の方で生存率が高くなる。ただし、これは雨が比較的多い年のみ見られる効果で、乾燥が厳しい年には同じ効果は見られない。乾燥が厳しいと日陰がある効果がほとんど意味をなさないのだろう。
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