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一斉結実:どうして、どうやって、どこで? [総説]

Kelly & Sork (2002) Mast seeding in perennial plants: why, how, where? Annual Review of Ecology and Systematics 33:427-447.

ちと古いけど、最近のマスティングがらみの論文は必ずこれを引用しているのでそろそろ読まねばと思っていたところ。毎度ながらAnnual Review of Ecology and Systematicsは長大な論文が多いので、山仕事が休みの日でないと読む気にならない。でも昔と比べると長い論文が減ったような気がする。

最初に気象とresource matching hypothesis (or weather tracking hypothesis)を評価して、次にマスティングを促進する選択圧となりうるものをレビューして、最後に全世界から集めた570箇所のデータに基づいた年変動のパターンを解析している。resource matching hypothesisって、Kelly (1996)のTREEで提示されたらしいけど、環境条件の変動が激しい砂漠のような環境では当てはまる場合。その後にIsagiさんのthreshold modelモデルが提示され、ニュージーランドの温帯林の12年間のデータにモデルを当てはめた場合、前者はpoorで後者がexcellentな結果だったらしい。

次にwind pollination、predator satiation、animal dispersalの3つの仮説についてまとめている。wind pollination仮説ではマスティング時に結果率が高くなることを示している論文が多いが、影響が見られないものもある。animal pollination仮説はwind pollinationのところでおまけ程度に扱われており、しかもそれを支持する結果は少ないとのこと。predator satiation仮説ではマスティング時に種子食害率が下がることを示している論文が多いが、逆の結果もあるらしい。また昆虫による種子食害と脊椎動物による種子食害ではマスティング時に全く違うパターンを示す例も報告されている。ただ、predator satiation仮説の研究例は多いけど、長期間調べた研究や同時に多種の種子食害者の影響を評価している研究は少ない。

animal dispersal仮説は果実食動物によって食べられる周食型の種子散布の植物ではマスティングによって負の影響を受けるし、貯食型散布の場合は広く散布されることが予想される。マスティング時には果実食動物の数は急激に増えることはないから飽和するのはわかるけど、貯食散布の場合は必ずしも広くはならないだろうし、結果的に種子食害を免れる種子が増えるというのはpredator satiation仮説と同じ。

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